最新記事

フィリピン

ボラカイ島が観光客受け入れ再開、もう行っても大丈夫?

Can I Go to Boracay? Tourist Paradise Reopens

2018年10月29日(月)15時48分
デービッド・ブレナン

ボラカイの夕陽を見てはしゃぐ観光客(10月26日) Ronn Bautista-REUTERS

<フィリピン政府は島に受け入れる観光客の数を制限し、他にも多数の禁止事項を設けている>

水質汚染が深刻化し、浄化作戦のため一時閉鎖されていたフィリピン中部の人気観光地ボラカイ島が10月26日、半年ぶりに観光客の受け入れを再開した。フィリピン政府は受け入れる観光客の数を制限し、生態系を保護するための厳しい規制を新たに設けた。

手つかずのビーチがあるリゾート地として知られるボラカイ島は、今年4月に閉鎖されるまで、毎年約200万人の観光客が訪れ、13億ドルの観光収入を得ていた。

閉鎖のきっかけは、島のリゾート施設近くの海に下水や排水が垂れ流される様子を映した動画がインターネットで広まったこと。フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が2月、ボラカイ島は「汚水溜め」になったと批判し、閉鎖を宣言した。

フィリピン政府は観光再開後、1日に受け入れる観光客数を6405人までに制限し、新たな規制に従う宣誓書への署名を観光客全員に求める、とAP通信が報じた。島に滞在できる観光客は常時わずか1万9200人に制限される、と英紙ガーディアンは報じた。

新たな規制には、ビーチでのゴミ捨て、飲酒、喫煙、焚火、ビーチでのパーティーの禁止も含まれる。水泳以外のマリンスポーツも、当局が生態系への影響を評価するまで当面禁止される、とガーディアンが報じた。ドゥテルテの命令で島にある3つのカジノは今も閉鎖されており、娯楽業界が猛反発している。

島の雇用に打撃

閉鎖期間中に、下水処理設備が整備され、約1000件の違法な建物も撤去された。島に何百件とあったホテルや簡易宿泊所、レストラン、商店のうち、新しい規制をクリアして営業再開を許可されたのはわずか157件。これらの施設の下水は今では当局が認可した下水管につながり、海から少なくとも30メートル離れた場所に建つ。

だが観光業の規模はまだ閉鎖前には及びもつかず、失業した約2万人の労働者のごく一部しか復職していない、とAP通信は報じた。

当局による立ち入り検査で、海に違法に汚水を垂れ流す下水管の存在や、立ち入り制限されている湿地帯に2件のホテルが建設されていたことが明らかになった。

17人の島の関係者が、注意義務を怠って環境災害をもたらしたとして責任追及された。市長は停職処分、ほかの16人も職務怠慢を理由に処分された。

島の観光再開を記念する式典には、フィリピン政府関係者や著名人が参列した。ベルナ・ロムロ・プヤット観光相は、浄化作戦後の島を訪れるお人々に向けたメッセージでこう呼び掛けた。「この島を私たちの家と思って大切にしよう。きれいで手つかずのまま守ろう。ビーチでの飲酒や喫煙、ゴミ捨ては厳禁だ」

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

グアテマラ、トランプ氏との関係構築へ 強制送還受け

ワールド

米が関係改善望むなら応じる用意、次期政権の出方次第

ワールド

ガザで報道車両に空爆、イスラエルは戦闘員標的と説明

ワールド

台湾総統府、中国との有事想定した初の机上演習
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 4
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 5
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 6
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 7
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 8
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 9
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中