高齢化進む日本で増加する「無縁遺骨」 失われる家族の絆
賃金がほとんど上昇せず、高齢者の子ども自身も年金で暮らしている中で、葬儀代など死亡時の費用は重荷になりかねない。
精進落としなどの飲食代や香典返しの費用、僧侶へのお布施代など伝統的な葬儀にかかる費用は計200万円程度になり得ると業界筋は言う。
最低限の葬儀を数十万円で行う新たなビジネスもある。
<増加する貧困高齢者>
近年、貧困高齢者の数は増えており、一部は自身の葬儀費用を出すことも難しい。政府統計によると、2015年、高齢者全体の3%近くが生活保護に頼っていたが、その割合は20年前と比べてほぼ倍増している。生活保護を受給している世帯の半数超が65歳以上だ。
「家族との関係性が希薄になる中で、孤独死した後、火葬した遺骨を引き取らないことも増えてくると思う」と、関西大学社会安全学部の槇村久子客員教授は言う。
かつて日本では、家族3世代が1つ屋根の下で暮らすことは珍しくなかった。だが日本経済が変貌を遂げて、少子化が進むにつれ、仕事などのために、実家から遠く離れた場所に住むようになった。
65歳以上が国内人口に占める割合は、現在の28%から2040年には36%に増加する見通しだ、と国立社会保障・人口問題研究所は予想している。
「今まで家族や地域が(亡くなった人々を埋葬する)役割を担っていた」と槇村氏。だが、そうした役割を担う人が減少する中、「行政の負担が増えていくと思う」と同氏は語った。
<安堵>
横須賀市では、葬儀や親戚に関する情報を残さずに亡くなる人が増えている。
市当局者は親族に手紙などで遺骨の引き取りを依頼するが、返事がないことも多いという。
「(そのように亡くなった人たちは)ごく普通の一般市民だ。誰にでも起こり得る」と、福祉部の北見万幸次長は話す。「骨が、今生きているわれわれ人間たちに警告している。何の準備もしないと、これだけ引き取られなくなっていくんだよ、と」