ブレグジットで人材難の英国、産業界にようやく自動化の波
重要な要因は、歴史的に英国の人件費が欧州諸国に比べて低いことだとBOEは指摘。英失業率は現在43年ぶりの低水準にある。
「しかし、相対的な人件費の差が縮まり始めたことで、一部の訪問先企業は、海外と同様のテクノロジーを英国に導入することを積極的に検討している」とBOEの調査は指摘する。
EUからの移民流入が大幅に減速していることで、「農業、製造業、サービス業におけるスキル不足が悪化している」とエージェントが9月に開催された金融政策委員会向けに作成した報告書で述べている。
「国民投票後、かつては存在した低コスト、低スキルの余剰労働力が確かに見当たらなくなった」。バーミンガム北方にあるチェスリン・ヘイでPPコントロール&オートメーションの最高経営責任者(CEO)を勤めるトニー・ハーグ氏は語る。
ロボットや自動化システム向けのコントロールパネル設計事業は好調だと同氏は言う。「この市場はまさに活気づいている。関連企業はどこも手一杯の状態だ」
<雇用に悪影響はあるか>
BOEのカーニー総裁総裁は先月、人工知能(AI)とロボットを含む自動化によって、長期的には、英国における雇用のうち10人に1人がリスクにさらされると語った。英中銀のチーフエコノミスト、アンディ・ホールデン氏は10日、英国の自動化が米国水準に追いつけば、賃金成長率は0.4ポイント低下すると示唆する調査結果を引用した。
もっとも、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのガイ・マイケルズ准教授が実施した17カ国を対象とした調査では、自動化の進展が、大幅な工場の雇用削減につながる様子は見られないという。
その理由の一端は、業務がロボットに置き換えられた後も、再訓練によって労働者の雇用が維持されることにある。これは、米国、フランス、ドイツに比べて2割以上も低いとされる英国の生産性が自動化で改善される可能性があるとの主張を裏付けるものだ。
「全体として、ロボット導入がその産業の雇用全般に特に大きな影響を与えている様子は見当たらない」とマイケルズ准教授は言う。
自動化が最も大きな脅威になるのは、英労働者の中でも給与水準の低い層だ。この層ではスキル向上が難しい傾向が見られ、最低賃金が平均賃金以上のペースで上昇しているために、労働者1人当たりのコストが最も急速に上昇している層だからである。
ミュラー・プレシジョンのカニンガム氏は、同社では基本的な工場労働に対して平均賃金よりも約1ポンド高い時給を払っていると言う。
「可能な限り、他社との差異を維持したい」とカニンガム氏。
鶏肉加工業のアバラフーズは、米国の巨大農産食品企業カーギル[CARG.UL]と英国企業の合弁事業だ。同社では、長年進めてきた自動化による従業員の減少はないものの、訓練と、より高いスキルを持つ労働者の採用へと焦点が移ってきているという。