ブレグジットで人材難の英国、産業界にようやく自動化の波
10月14日、英国製造業では長らく、他の先進諸国に比べて自動化が遅れていた。理由の1つは、欧州大陸から無尽蔵とも思われる労働者の流入があったからだ。写真は英レティッチにあるミュラー・プレシジョン・エンジニアリングの工場で8月撮影(2018年 ロイター/Darren Staples)
英南部レティッチにあるミュラー・プレシジョン・エンジニアリングの工場で、ジェームス・ギブスさんは、ガタゴトと動く3台の機械を担当している。彼が生まれるより前に製造された古い機械だ。
ポーランド人とハンガリー人の同僚2人は、20秒に1回、半完成品の金属部品をプラスチックの軸に装着して、研磨機のあいだに15秒間差し入れる。仕上がったサイズをチェックして、トレイに入れる。
「繰り返すだけの作業だ」と27歳のギブスさんは言う。「たとえ何時間働くにしても、その間は装着ミスが起きないように集中力を保たなければならない」
来年半ばには、作業員2人が担当している業務は、センサーとロボットアームによって行われるようになる。
英国の製造業では長い間、他の先進諸国に比べて自動化が遅れていた。理由の1つは、欧州大陸から無尽蔵とも思われる労働者の流入があったからだ。
だが、2016年6月の英国民投票で欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を決めて以来、こうした低コストの労働力流入を当てにすることが難しくなった。3月までの1年間で東欧からの移民純流入は、過去8年間で最低となり、今後も状況は悪くなる一方ではないかと業界団体は懸念している。
自動化投資に火がつくことは、英国経済にとって大きな意味があるかもしれない。企業が労働力頼みから脱却すれば、生産性が改善され、長らく年2%程度で低迷している賃金上昇も勢いづく可能性がある、とエコノミストは指摘する。
ミュラー・プレシジョンでは、すでに自動化が進んでおり、カバーの付いたコンベアによって、コンピューター制御の旋盤に部品が送り込まれている。このレディッチ工場に15万ポンド(約2200万円)を投資することで、ボルボ製トラック用のブレーキ部品を製造するプロセスが自動化される予定だ。
約130人が働く同工場でマネージング・ディレクターを務めるアダム・カニンガム氏によれば、現場での手作業は単調だが危険を伴い、適任者を見つけることが難しい場合もあるという。
「それに加え、ブレグジットによって労働者の流入数が減っていることもあり、特にこの分野では自動化を考える必要があるとの声が上がってきた」とカニンガム氏。「基本的には、人間の代わりにロボットを導入することになるだろう」
国際ロボット連盟(IFR)によれば、英国では、先進諸国のみならず、東欧諸国の一部と比べても、産業用ロボットを工場で活用する度合いが低いという。