最新記事

ウイグル

ムスリム世界が「同胞」ウイグルの悲劇を無視する訳

Cold Brotherhood

2018年10月18日(木)19時00分
ニチン・コカ(ジャーナリスト)

中国の空前の情報管理が奏功している側面もある。パレスチナ人やロヒンギャの苦難を知らせる映像やインタビューや記事は、世界中のメディアにあふれている。ところが中国には通信アクセス制限と巨大な検閲体制があるため、極めてクオリティーの低い画像以外、新疆ウイグル自治区の最新の写真や映像はほとんど外に出てこない。

だが、ムスリム国家の沈黙が破られる可能性はある。例えば、ムスリム国家でも民主主義体制を取るマレーシアとインドネシアから、ウイグル支援の声が上がるかもしれない。歴史的・文化的つながりが深く、世界最大の亡命ウイグル人コミュニティーがあるトルコにも期待ができる。実際、09年のウイグル騒乱では、ムスリム国家のリーダーの中で唯一、レジェップ・タイップ・エルドアン大統領(当時は首相)が中国批判の声を上げた。

ただ、権威主義的傾向を強めるトルコは、中国を欧米諸国に対抗する「同志」と見なすようになった。アラブ諸国も中国経済への依存を深めており、中国政府の機嫌を損ねるような言動はしないだろう。中国政府は今年7月、アラブ諸国に計200億ドル
の融資を約束したばかりだ。

残念ながら、世界のイスラム教徒がウイグル人のために一致して声を上げる可能性は、小さくなる一方だ。中国が力を増すにつれ、ウイグル人はますます孤立を深めている。

※本誌10/23号(10/16発売)「日本人がまだ知らない ウイグル弾圧」特集はこちらからお買い求めになれます。

【参考記事】ウイグル「絶望」収容所──中国共産党のウイグル人大量収監が始まった
【参考記事】ウイグル族を「QRコード」で管理する中国
【参考記事】ウイグル絶望収容所の収監者数は89万人以上

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中