最新記事

日中関係

なんと、中国CCTVが安倍首相礼賛報道?

2018年10月24日(水)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

にこやかな安倍首相 Ints Kalnins-REUTERS

中国の中央テレビ局CCTVが安倍首相を礼賛した。この間まで反安倍であれば、どんなことでも報道していた中国のこの変わりよう。台湾問題と貿易問題でトランプと衝突している中国が安倍首相の声明を利用している。

CCTVが安倍首相を取材し礼賛報道

10月24日、中国の中央テレビ局CCTVは国際チャンネルのニュースで、CCTVが取材した際に安倍首相が回答した内容を、礼賛のトーンで伝えた。

それによれば安倍首相はおおむね以下のように述べたとのこと(中国語で伝えたものを日本語に訳しているので、必ずしも完全に一致しているわけではない表現があるかもしれない)。

1.今年は日中平和友好条約締結40周年記念だ。この条約はスタート地点であり、中国と共に祝い、中国の指導者と共に世界の多くの問題、たとえば政治、安全、文化、国民の交流などに関して話し合い、日中両国の関係をさらに発展させ、安定と繁栄の道を歩んでいきたい。

2.日中両国の間には難しい問題も横たわっており、両国が力を合わせてしっかりとコントロールしていく必要があるが、あくまでも安定と友好を重んじていきたい。

3.日中両国の間では300億ドルに上る貿易額があり、分けることのできない緊密な関係にある。中国の経済繁栄は世界にとって貴重なチャンスであり、日本は歓迎する。世界経済発展の中心であるアジアのニーズにとって、中国は大きな意義を持っている。

4.台湾問題に関して、日本は1972年に中国とともに発布した日中共同声明の立場を維持する。

5.貿易に関しては自由・公正のルールに基づく経済協力が重要である。

6.日中両国はWTOなど、多角的な枠組みの中で協力し、日中両国は世界の平和と安全に対して責任を持ち、世界の期待に応えていきたい。

バックに使われている画面も、安倍首相のポジティブな表情を大写しにして、「礼賛」のムードをそれとなく醸し出させて、「何ごとか?」と思わせる違和感を与えた。

これまでは安倍首相の報道となると、憲法改正反対デモなどの際に使われたヒトラーに似せたプラカードを大写しにしたり、沖縄での抗議運動などがクローズアップされることが多かったが、なんとも対照的である。

昨年7月8日のG20ハンブルク・サミットにおける日中両首脳の表情と比べていただきたい。安倍首相が普通の外交儀礼として、常識的に笑顔で握手しお湯としたのに対して、習近平国家主席は顔をそむけている。この時点では、まだ「日本の首相に笑顔を見せてはならない!」状況だったのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国、カナダの農産物・食品に報復関税 最大100%

ワールド

マスク氏とルビオ国務長官、閣僚会議で衝突 米政府機

ビジネス

パウエルFRB議長、「ドットチャート」見直しの可能

ワールド

アングル:景気悪化のNZ、就職機会求め国外移住者が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 3
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 4
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    ホラーではないが背筋まで凍る...「幽霊の視点」で描…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 7
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 10
    米ウクライナ首脳会談「決裂」...米国内の反応 「ト…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中