最新記事

日中関係

なんと、中国CCTVが安倍首相礼賛報道?

2018年10月24日(水)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

上のリンク先が開かない方は首相官邸ホームページの静止画面のこの写真をご覧になっても、想像がつくものと思われる。

トランプ大統領に対抗するため

CCTVのこの報道は、明らかにトランプ政権の対中強硬策に対抗するためであることは、誰の目にも明らかだろう。

中国側は、中国にとって言ってほしいことを安倍首相から引き出している。

たとえば「4」の台湾問題に関しては、これは「一つの中国」原則を守るという意味だが、トランプ政権が「台湾旅行法」や「防衛権限法」などで、事実上「一つの中国」論に疑問を呈しているのに対して、なんとしても安倍首相のこの発言を中国は欲したものと考えられる。

また「5」にある「貿易に関する自由・公正のルール」だが、これはトランプ政権の対中貿易戦略を非難したものであることは容易に想像がつく。

最後の「6」にあるWTO関係だが、中国は最近、アメリカが中国を「非市場経済国」として排除しようとしていることに関して激しい批判を続けており、それに反して安倍首相が「中国排除」のための「毒丸(毒薬)条項」を持ち出したりしていないことを大歓迎し、日本を中国側に取り込もうとしている。そのことの表れであると見るべきだろう。

台湾からの悲鳴

習近平は何としても台湾を中国大陸に吸収してしまおうと、激しい外交戦略を展開してきた。

たとえば習近平は台湾が蔡英文政権になってから、それまで台湾と外交関係のあった22ヵ国の内、5ヵ国もの国に台湾と断交させ、中国大陸(中華人民共和国)と国交を結ばせている。蔡英文政権になってから台湾と断交した5ヵ国は「エルサルバドル、サントメ・プリンシペ、パナマ、ドミニカ、ブルキナファソ」だ。すべて習近平が強引にチャイナ・マネーで大陸側に引き寄せてしまった。

2008年5月から2016年5月までの国民党の馬英九政権下で台湾と断交した国がわずか1ヵ国(ガンビア)であることを考えると、わずか2年間において縁を切らせた国のなんと多いことか。

10月20日付のフォーカス台湾は<謝駐日代表、中国の「日本を引き寄せる」戦略に懸念/台湾>というタイトルで台湾の懸念を報道している。台湾は、「日本を引き寄せ、台湾を孤立させる」中国の戦略に悲鳴を上げているのだ。しかし上記「4」は、安倍首相に、その台湾の悲鳴を打ち消させる効果を持っている。

すべて計算され尽くした中国の戦略。

日本はその中国を「手玉に取り」、上に立つことなど可能なのだろうか。

CCTVのニュースを見ながら、「敵ながらアッパレ」と、ため息が出た。

20250318issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年3月18日号(3月11日発売)は「日本人が知らない 世界の考古学ニュース33」特集。3Dマッピング、レーダー探査……新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハワイ島の気象観測拠点が経費削減候補に、温暖化研究

ワールド

トランプ氏、テスラの新車購入へ 「マスクへの支持の

ワールド

米・ウクライナ高官、サウジで協議開始 対ロ戦終結の

ワールド

欧州の安保強化へ共通解決策を、フィンランド中銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 2
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手」を知ってネット爆笑
  • 3
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 4
    スイスで「駅弁」が完売! 欧州で日常になった日本食、…
  • 5
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 6
    「中国の接触、米国の標的を避けたい」海運業界で「…
  • 7
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 8
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 9
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 10
    「汚すぎる」...アカデミー賞の会場で「噛んでいたガ…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 6
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 7
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中