静かな空間を切り裂く悲鳴! VRで未来の映画館を体験させた釜山国際映画祭
会場内で盛り上がっていた企画は?
前回の記事「旭日旗から中国美人女優の失踪問題まで 今年も政治が持ち込まれた釜山国際映画祭」でも触れたように日本の旭日旗問題や、中国の政治がらみの話題などが映画祭の外では話題になっていたが、実際に映画祭を訪れてみると、会場で一番注目を集めていたのは今話題のVR(Virtual Reality)だった。日本でも映像だけでなく、ゲームや企業PRなど様々な用途への利用が期待されるVRだが、釜山国際映画祭では一般の観客が来場できるブース「VRシアター」を3つの個所に分けてVRの魅力を観客にアピールしていた。
まず、「VRムービー館」では、事前予約制で4つの短編VR映画を見ることができる。また「VRムービーエクスペリエンス館」は、観客が操作できるゲーム参加型のもので、一般的にVRと言われて思い浮かべるタイプの体感型VRである。「VRムービーライブ館」では、観客がいくつもあるVR映画から好きな作品を選んで見ることが出来る。会場内に入ると回転可能な椅子にVR機器(HMD, Head Mounted Display)が設置されていて、観客はHMDを装着し椅子に座って上下左右をクルクルと見渡すようにして映画を見るのだ。一般的な映画館のイメージとはかなり違うが、もしかしたら近未来の映画館の姿はこのようなのかもしれないと感じた。
新しい物好きでテクノロジー機器などに敏感な韓国人にVRは人気のコンテンツである。このVRシアターのブースはかなりの人気で、最長40分待ちにもなった。このVRシアターでは合計40作あまりの映画が上映されたが、ジャンル別にみるとホラーとスリラーが一番多かった。
また、釜山国際映画祭アジアンフィルムマーケットのブースでは、日本でも2017年に公開された『新感染 ファイナル・エクスプレス』のVR版が上映された。これは、同作品の韓国内配給会社NEWの版権部門コンテンツパンダが、シンガポールの特撮制作会社VIVIDTHREEと共同製作したものだ。本編すべてではなく、スリル感あふれるVRに適したシーン3か所を抜粋したダイジェスト版として制作した。配給会社NEWのブース内ではこの3か所のうち「電車内でゾンビに攻撃されるシーン」のVR版を海外映画関係者向けに紹介していた。また、配給会社NEWは10月25日公開された新作映画『猖獗 (Rampant)』もVR製作するとしている。これは『新感染 ファイナル・エクスプレス』と同様にゾンビものではあるが、時代劇ということで視覚的にも変わった映像に期待できそうだ。