韓国の「働き方改革」、週52時間勤務制導入で、想定外の混乱招く
余暇は増えたが、収入も減った… georgeclerk-iStock
<韓国で労働時間52時間制が導入されて4ヶ月、労働生産性の向上と雇用創出が期待されたが、なかなか想定どおりにはいかないようだ...>
労働時間52時間制が導入されて4か月経過した韓国で、格差拡大と空洞化を懸念など、想定外の声がではじめている。
韓国の勤労時間は週40時間が原則で、週最大28時間まで超過勤務が認められていたが、2018年2月に成立した改正勤労基準法で超過勤務の上限が週12時間に短縮された。
また、これまで「週」に関する規定がなかったが、一週を7日とすることが明記された。たとえば企業が月曜から金曜を一週と定めると月曜から金曜までの超過勤務は28時間が上限だが、土日の勤務は28時間に含まれないとする解釈が可能だったのだ。
この改正勤労基準法は、公共機関と従業員300人以上の事業所は2018年7月1日から施行されており、50人から299人の事業所は2020年1月、5人から49人の事業所は2022年1月からそれぞれ施行される予定になっている。
余暇産業など最大15万人の雇用創出を期待したが...
法改正の背景に労働生産性の向上と雇用創出の期待がある。
韓国の年間勤労時間はOECDの平均1766時間を大きく上回る2113時間でメキシコに次いで2番目に長いが、2016年の1時間あたりの労働生産性は31.8ドルとOECD平均46.6ドルの70%以下の水準にとどまっていた。
勤労時間の短縮は過労死などの健康被害を防ぐ目的があり、時間短縮によって不足する労働力の補填や増加が見込まれる余暇産業など、政府は5年間で最大15万人の雇用創出を期待する。
実際に時間短縮で浮いた時間を余暇活動や自己啓発に活用する会社員が増えており、映画館や美術館、ミュージカル公演は夕方以降の利用者が増加し、書店、ゴルフ練習場、ボーリング場、フィットネスクラブなど娯楽関連売上げは前年同期と比べて9.2%増加した。
またソウル銅雀区のように70.3%増加した地域や江西区、東大門区など住宅地域は軒並み増加したが、オフィス街を抱える鍾路区や矜川区はそれぞれ7.7%、6.7%減少しており、地域間格差が広がりはじめている。
2018年10月2日、通信大手のKTとクレジットカード大手のBCカードが、会社員の生活パターンの調査分析結果を発表した。
大企業や公共機関が集中するソウル光化門地域で働く人の勤務時間は以前と比べて55分減と制度導入で勤務時間が大きく短縮されたが、一方で金融業が集まる汝矣島は7分、IT企業が多い城南市板橋(パンギョ)地区は12分の短縮にとどまり、中小メーカーが集まる加山デジタル団地は勤務時間が増加するなど、地域によって分かれる結果となっている。
さらに光化門や板橋は午後6時以降の飲食店売上げが10%以上減少しており、調査を行ったKTは退勤後に会社の近くで食事をしていた会社員が、家の近くで夜を過ごすようになったと分析する。