平壌共同宣言は過去の合意の二番煎じだ
平壌でマスゲームを鑑賞した南北両首脳(9月19日) Pyeongyang Press Corp/REUTERS
<平和と緊張緩和をぶち上げたが、非核化の具体策はなし――アメリカは「急ぎ過ぎる」韓国側をペースダウンさせられるか>
南北首脳会談の華やかな演出の中、9月19日に発表された平壌共同宣言は、一見すると朝鮮半島情勢の新たな突破口のように見える。だが詳しく分析すると、二番煎じの感を拭えない。
平壌宣言は平和と緊張緩和をうたい上げているが、北朝鮮が非核化の約束を実行するための具体策には言及していない。むしろ目立つのは、過去の首脳会談の合意文書との共通点だ。
第1に、韓国の北朝鮮に対する追加支援の約束。ただし、これは国連の制裁決議違反になる。
第2に、朝鮮半島の民族自決を強調し、アメリカの関与を軽視する北朝鮮流の表現の採用。
第3に、緊張緩和措置の合意。ただし、近隣諸国を脅かしているのは北朝鮮だけだ。
第4に、国連決議が北朝鮮に要求している核兵器、ミサイル、生物化学兵器開発計画の「完全かつ検証可能で不可逆的な」廃棄については、曖昧な表現を使い、条件を付けて逃げている。
第5に、北朝鮮だけを悪者にしないように、非核化については文書の最後のほうで簡潔に触れるだけにとどめている。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が約束した経済的支援は、国連決議とアメリカの法律に対する明確な違反を国連とアメリカが黙認しない限り、実現不可能だ。米政府は既に、非核化の進展を要求しないまま北朝鮮との関係改善に突き進む文にいら立っている。
13年前より後退した内容
.偶発的な武力衝突や軍事対立のエスカレートを防ぐための信頼醸成措置は歓迎できる。だが韓国と在韓米軍に対する北朝鮮の通常兵器の脅威が低下する前に、南北軍事境界線に設置された非武装地帯(DMZ)にある監視所を撤収するなど、同盟国の防衛力を弱体化し得る文のやり方はリスクが大き過ぎる。
米政府は文に、核とミサイルの廃棄に向けた北朝鮮の明確かつ具体的なコミットメントを引き出すことを期待していた。だが平壌宣言は、北朝鮮とアメリカの「非核化」の定義の差を埋められず、北朝鮮が取るべき措置を示すことにも失敗した。
北朝鮮が平壌宣言で示した非核化の約束は、13年前に同意した内容より後退している。05年9月の6カ国協議の共同声明では、北朝鮮は「全ての核兵器と既存の核開発計画の廃棄、核拡散防止条約(NPT)とIAEA(国際原子力機関)の保障措置への早期復帰を約束」した。
北朝鮮は相変わらず、まずアメリカが適切な措置を取るべきだと主張している。以前は問題解決を阻む最大の障害として米韓合同軍事演習を非難していたが、シンガポールの米朝首脳会談でトランプ米大統領から演習凍結という譲歩を引き出した後は、朝鮮戦争の終戦宣言が必要だと主張している。