ブレグジット支持の英保守党員に高まる不満 メイ首相への反旗広まる
9月5日、英国の雨降る週末、年配の保守党員たちが、ソーセージと赤ワインを手に夜の庭に集まっている様子は、転覆を図ろうとする光景だと思えないかもしれない。写真は、バーベキューを主催したジョン・ストラッフォード氏。英スラウ近郊の自宅で8月撮影(2018年 ロイター/Peter Nicholls)
英国の雨降る週末、年配の保守党員たちが、ソーセージと赤ワインを手に夜の庭に集まっている様子は、転覆を図ろうとする光景だと思えないかもしれない。
だが、このような集まりは実際に英国各地の庭や公民館で起きており、こうした動きが、同国が欧州連合(EU)からどう離脱すべきかを巡って、英議会で行われる投票の鍵を握る可能性がある。
ビーコンズフィールドは富裕層が暮らすロンドン郊外のベッドタウンで、保守党の地盤だ。しかし混み合ったキッチンからは、EUと決別し英国の主権を取り戻すという、離脱支持派が抱いた「つかの間の夢」をメイ首相がいかに売り渡したかについて不満の声が聞こえてくる。
「首相は、実際はそうではないのに離脱しようとしている印象を与えることで、国を間違った方向に導いている」と、小規模ビジネスに投資しているというロジャー・ケンドリック氏は、保守党内で保守民主主義を推進する圧力団体の集会でロイターに語った。
「国を欺き、その報いを受けずに済むと彼女は考えている。われわれはだまされている」と、紙皿の食べ物を口にしながら同氏は話した。
ケンドリック氏の意見は看過できない。
約12万4000人いる保守党の一般党員は、資金を集めたり投票日に地元票を集めたりするなど、英政治システムにおいて重要な役割を担っている。彼らは主に無償でそうした活動を行っている、中には給料を得ている地元議員もいる。
こうした草の根運動の圧力により、ほんの一握りの議員がメイ首相の提案に反対票を投じただけでも、首相が現在EUと交渉している計画が台無しになる恐れがある。
3月29日の「離脱日」まで7カ月を切る中、2.6兆ドル(約288兆円)規模の英国経済と世界最大の貿易圏であるEUの今後の関係は危機に直面している。
EU離脱を巡り、英国内では意見が分かれたままだ。2016年6月に実施された英国民投票の結果は、離脱支持が52%、不支持が48%だった。国民投票を求めた保守党内でも同様だ。
英国各地の党員25人超に対する取材では、地方の一般市民と首都ロンドンの党指導部との間に横たわる「分断」は、ブレグジット(英国のEU離脱)よりも根深い可能性が明らかになった。
「20年かけてここまできた。ブレグジットにより、われわれの関係は土壇場に追い込まれた」と、ビーコンズフィールドのバーベキューを主催したジョン・ストラッフォード氏は言う。
「党議員の6、7割が『残留』を支持し、一般党員の同じく6、7割が『離脱』を支持した場合、保守党は事実上、終わりを迎えることになる」