関西空港、露呈した巨大欠点 「国際空港」として最悪レベルの情報発信

2018年9月12日(水)07時00分
さかい もとみ(在英ジャーナリスト)*東洋経済オンラインより転載

関空は5日の時点で、「6日中の再開はなし」とだけ発表。「閉鎖となる期間」について、タイムラインをしっかり示していなかった。

「明日はダメだけど、明後日どうなるか説明してくれないから、一応飛ばす準備はしなきゃいけない。しかも状況がわかってない日本人顧客が次から次へとやって来るし......」(ヒースロー空港のカウンター職員)

その後、航空各社は9月11日ごろまでの関空便をとりあえず欠航とする方向で態度を固め、行き先を振り替えた上で「とにかく日本のどこかへ顧客を送る」という現実的な対応を開始した。

航空会社によって代替便提示へのケアがおざなりだったり、振替便の席が取れずやむなく現地滞在を延ばしたり、日本国内の全く違う空港へ飛ぶことになった旅客もいたようだが、何らかの形で日本にたどり着けたようだ。各航空会社は、手数料無料での払い戻しやルート変更などに応じており、顧客の便宜を図っている。

関空滞留の中国人、領事館のサポートで脱出

高潮による浸水に加え、タンカーの衝突で橋が破損したことで、空港施設内には一時8000人もの人々が滞留していた。

シャトルバスや神戸空港への高速船を使った懸命の救助活動で、ほぼ全員が5日夜遅くには空港島から脱出できた(ちなみに25人ほどの訪日客が「行くところがない」という事情でターミナル内に残ったという)。

果たして、関空の職員らは言葉が通じない訪日客にどのようなケアを行ったのかを調べるため、筆者はアジア各国の人々によるSNS上の書き込みをあちこちチェックしたが、その中から意外な事実を見つけた。

駐大阪中国領事館が空港に残る自国民のために「救出作戦を行った」という報告が書かれていたのだ。あれこれ調べたところ、同領事館は関空サイドと水面下で交渉を進める一方、大型バスをかき集め、4日の夜から未明にかけて対岸でスタンバイ、翌朝(5日)の救出開始を目指した、という。

遅れがあったものの、11時半ごろには最初の一団を乗せることができ、同日深夜までに計1044人の「同胞」を救うことができた、としている。なお、このバスの利用者の大多数は中華人民共和国籍だったが、中には香港、マカオ、そして「台湾パスポート」の人々が若干ながら混ざっていたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ代表、和平協議は「生産的」 具体的な

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米中緊張緩和への期待で安心

ビジネス

米経済活動は横ばい、関税巡り不確実性広がる=地区連

ワールド

ウクライナ大統領のクリミア固執発言、和平交渉の障害
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    ウクライナ停戦交渉で欧州諸国が「譲れぬ一線」をア…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中