最新記事

軍事

比ドゥテルテ、イスラエルで過去の暴言を謝罪 武器と石油が取り持つ「怪しい同盟」

2018年9月5日(水)13時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

現地メディアに「怪しい同盟」と批判されたドゥテルテ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相 Ronen Zvulun-REUTERS

<国内では相変わらずの問題発言を繰り返すフィリピン大統領だが、初のイスラエル訪問では過去の暴言を謝罪するなど低姿勢。その背景とは?>

9月2日からイスラエル、ヨルダンと中東を訪問しているフィリピンのドゥテルテ大統領は、イスラエルでかつての「ヒトラー発言」について謝罪するとともに「売春婦の息子」呼ばわりしたオバマ米前大統領にもお詫びの気持ちを表明した。

問題発言やセクハラまがいの言動で話題を内外に振りまいてきたドゥテルテ大統領だけに、「殊勝な心掛け」「心を入れ替えたのか」と"失望"する向きもあったが、一方では中東訪問前に起こした女性蔑視発言がフィリピン国内で大きな物議を醸しており、相変わらず「ドゥテルテ節」は健在のようだ。

今回の訪問はイスラエルのネタニヤフ首相、ヨルダンのアブドラ国王の招待によるもので、フィリピン大統領がイスラエルを訪れるのは1957年の両国国交樹立以来、初めてのことだ。イスラエルには約28,000人、ヨルダンには約48,000人のフィリピン人出稼ぎ労働者がいることも訪問の理由とされている。

ヒトラーは狂人、オバマは一般人

ドゥテルテ大統領は9月3日、エルサレムにあるユダヤ人虐殺(ホロコースト)記念館「ヤド・バシェーム」を訪問して献花し「ひとりの狂人に一国が従ってしまうなど信じられないことだ。こうしたこと(ホロコースト)は二度と起こしてはならない」と述べ、ヒトラーを批判した。

実はドゥテルテ大統領は2016年の演説で、ヒトラーのユダヤ人虐殺を引き合いに出して「ヒトラーはユダヤ人を300万人殺害した。フィリピンには300万人の麻薬中毒者がおり、私も喜んで殺したい」と発言。国連、イスラエル、ドイツをはじめとした国際社会から一斉に批判を受けて、後に謝罪に追いこまれたという経緯がある。

参考記事:比ドゥテルテ大統領「オバマ地獄に落ちろ」

また出稼ぎフィリピン人との会合では、かつて麻薬犯罪事案へのドゥテルテ大統領の政策を批判したオバマ前大統領を「売春婦の息子、地獄に落ちろ」などと罵ったことについても触れ、「失礼な人であることには変わりないが、今は一般人であり、そうした言葉を使って申し訳なかった。許してほしい」と謝罪、珍しく殊勝な姿勢を示した。


ドゥテルテ訪問に際し、かつてのヒトラー賞賛発言を取り上げるイスラエルのメディア i24NEWS / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中