ベトナム高裁、人権活動家の控訴審で禁固13年 人権・民主活動家に厳罰で臨む政府
上級審へ訴えることで政府の人権迫害を世界へ伝えるグエン・ヴァン・トゥック被告 (c) VOA Tiếng Việt / YouTube
<9月11日から日本の河野太郎外相をはじめ、アジアの主要閣僚らが参加する「ASEANに関する世界経済フォーラム」が開催されたベトナム。だが、その一方でこの国では人権活動家が次々と不当拘束され、裁判で有罪を受けている──>
ベトナム北部紅河デルタ地帯にあるタイビン省の高等人民裁判所は9月14日、国家転覆容疑で禁固13年の下級審判決を受けた民主活動家グエン・ヴァン・トゥック被告(54)に対する控訴審で、下級審判決を支持する判断を下し、禁固13年の実刑判決が維持された。
ベトナムでは最近、民主活動家、人権運動家、ブロガーなどに対し、社会・国家の安全を脅かしたとして国家転覆罪などを適用して長期の禁固刑とするなど厳しい判決がでる裁判が続いている。
国際的な人権擁護団体などからは手厳しい批判が出ているが、ベトナム政府は「国内の治安維持は優先課題」として一向に意に介さない姿勢を続けており、民主化組織や活動家などにとっては長く厳しい時代がなお続いている。
「筋金入り」の活動家に厳しい司法判断
トゥック被告はベトナムのネットで同志が集うオンライン組織「民主主義の結社」の主要メンバーのひとりで、その積極的な活動がベトナム刑法79条の「国家転覆罪」に違反するとして身柄を拘束、裁判を受けていた。
同被告は以前、2008年にも刑法88条の「反国家プロパガンダ違反」で禁固4年の実刑判決を受け服役。2012年に釈放され活動を再開していた。
2018年4月10日に下級審で禁固13年の実刑判決を受けたトゥック被告は控訴して無実を訴えていたが、控訴審も下級審と同じ判決が下された。政府寄りが顕著なベトナムの司法制度だが、特に人権や民主化に関する裁判では一度出された判決が覆ったり、減刑されたりすることはほぼ不可能といわれている。
判決を伝える「ラジオ・フリー・アジア」(本拠地・米ワシントンDC)によるとトゥック被告の控訴審での判決公判を傍聴した妻のブイ・ティ・レさんは「夫は刑が軽くなることなど期待していなかった。夫は政府転覆などに一切関与してなどいません」と容疑への関わりを否定して無罪を主張した。
その上で「夫はただ控訴審を通じてベトナムにおける多元論の必要性や国民の平等を改めて訴えたかっただけです」と述べ、法廷でのトゥック被告の揺るぎない信念を称えた。
またレさんは、収監中に体調の不良を訴えていたトゥック被告について「今は血圧も安定しています」と健康状態に心配ないことを強調するとともに、トゥック被告が控訴審判決も不満として上告する意向を示したことも明らかにした。
このようにトゥック被告は言ってみれば「筋金入りの活動家」で、それが当局の怒りを倍増させ、今回の禁固13年という長期の実刑判決に繋がったとみられている。