トランプvs.金正恩、腹の探り合い
米朝首脳会談 両首脳は6月12日、シンガポールで初対面した Jonathan Ernst-REUTERS
ポンペオ訪朝が中止された。好戦的書簡も理由だろうが、そればかりではない。何としても終戦宣言が欲しく核申告リストとの同時交換を狙う北朝鮮は、米側が満足するリストを出し渋っている。どちらが先に折れるかだ。
北朝鮮からの書簡
8月23日、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は、新しく任命された北朝鮮政策特別代表のスティーブン・ビーガン氏(元フォード副社長)とともに「来週」訪朝する予定であると、記者会見で発表した。
米国務省のナウアート報道官は同日の記者会見で、「ポンペオ氏の訪朝に際して、金正恩委員長との会談は予定していない」と予防線を張った。
すると韓国の「朝鮮日報」は24日、ポンペオ氏が8月27日に訪朝することで合意したと、米朝の実務者間の接触で決まったと伝えた。
ところが一方、複数の米政府関係者によると、その同じ日の24日朝に、ポンペオは北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)副委員長から書簡を受け取ったとのこと。その手紙は非常に好戦的で、「アメリカは未だ、平和条約に向かって話し合うという北朝鮮の期待に応える準備がない」として、そうであるなら「非核化プロセスが崩壊するかもしれない」と書いてあったという。
ポンペオはその手紙をすぐさまトランプ大統領に見せ、その場でポンペオの訪朝中止を「突然」決定したとのこと。それはポンペオが平壌に向けて発つ、わずか数時間前の出来事だったと、詳細な経緯をCNNが伝えた。
金正恩がどうしても終戦宣言を必要とする理由
7月9日付のコラム「金正恩は非核化するしかない」で書いたように、金正恩は米中両国からの要求に挟まれて、「非核化するしかない」のである。
だから内外に「非核化して対話路線に転換する」と宣言してしまった。
「対話路線」が如何にすばらしいかを北朝鮮の一般人民に納得させるには経済を豊かにしなければならない。最も怖いのは軍隊を納得させることだ。そのために事前に軍幹部の核ミサイル開発強硬派は更迭して対話路線を容認する穏健派に人事異動させはしたものの、多くの兵士を納得させるには、なんとしても「終戦宣言」が欲しい。