貿易戦争が米企業に迫る「メイド・イン・チャイナ」再考 米国工場の方が低コスト?
2兆ドルの問題
とはいえ、現段階では、中国にとどまる米国企業も多数存在する。特に中国やアジア地域の巨大市場を狙う企業はなおさらだ、とGMMのガンジーCEOは指摘する。
中国には依然として最適なインフラやサプライチェーン、エンジニアの人材があり、低コストをテコに企業誘致を狙う他の国々にとって、大きなハードルになっている、と業界幹部らはロイターに語った。
規模の面をみても、中国に代わる存在はそうは現れない。米シンクタンクのブルッキングス研究所が7月発表した報告書によると、中国製造業の生産額は約2兆ドル(約220兆円)で、世界最大だった。
米カリフォルニア州サンタモニカに本拠を置く電動キックスクーター製造スタートアップのバードは、「バードの規模やニーズに合う電動スクーターを生産できる業者は、米国にはいないと認識している」と、6月にUSTRに提出した意見書で述べている。
同じく中国でスクーターを製造する米新興企業バイテロジックスを率いるキース・シーラッツ氏は、中国からの生産移転は難しいと話す。その代わり、当面はコスト上昇分を負担する一方で、関税影響を受けにくい欧州での事業を拡大する考えだという。
中国の製造業が一夜で消えることはないにせよ、生産拠点のシフトは避けられない──。そう語るのは、特殊な業務用輸送梱包材の製造を手掛ける米プロコンパシフィックで、上海を拠点とするアジア事業の責任者を務めるダン・クラッセンスタイン氏だ。
中国政府が環境汚染源となる利幅の少ない産業に対する締め付けを強めたことで、より安価な労働力を求めて、南アジアや東南アジアへの製造拠点の移転を始めていた、と同氏は語る。
関税強化は「その動きを加速するだけだ」と付け加えた。
プロコンパシフィックは、約5年前まで全ての製造を中国で行っていたが、現在は4分の1をインドで、5─10%をベトナムで製造している。