運営権獲得へ海外カジノ事業社が猛攻「大阪夏の陣」
8月22日、7月末のある夜、天神祭のフィナーレを飾る豪華な花火が、大阪の空を明るく染めた。今回初めて花火のスポンサーとなったのは、マカオのカジノ運営会社、メルコ・リゾーツ&エンターテインメント。写真はルーレットテーブル。都内で4日撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
7月末のある夜、天神祭のフィナーレを飾る豪華な花火が、大阪の空を明るく染めた。今回初めて花火のスポンサーとなったのは、マカオのカジノ運営会社、メルコ・リゾーツ&エンターテインメント。
この数時間前、41歳の大富豪、メルコのローレンス・ホー最高経営責任者(CEO)は、松井一郎・大阪府知事と面会していた。それに先立ち、同氏は自然災害対策のために大阪府に多額の寄付を行った。
MGMリゾーツ・インターナショナルのジェームス・ムーレンCEOも、大阪にいた。寄付は行わなかったが、チャーターした船に約100人を招待し、ブルーマングループのショーでもてなした。
同時期に行われたこうしたパーティーやイベントは、日本初のカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を目指す大阪に、カジノ運営会社として存在をアピールする試みだ。この数日前、国会ではIR実施法が成立し、最初の設置場所として3カ所が選ばれることが決まった。
政治的な強い支援、施設に利用可能な土地の存在、地元企業の後押しに支えられ、人口270万人を抱える大阪市は、カジノを設置する日本初の大都市になるとみられている。
MGM幹部、エド・バワーズ氏は「東京は手を上げていないし、横浜も手を上げていない。大阪は手を上げた」と話す。
大阪でのカジノ運営受託を目指す外国企業は、この他にギャラクシー・エンターテインメント、シーザーズ・エンターテインメント、ゲンティン・シンガポール、ラスベガス・サンズなどがある。
モルガン・スタンレーの試算によると、大阪でカジノを運営すれば、年間約40億ドルの売り上げを生み出すという。
経済規模や政治的な力で東京の後を追う大阪にとって、IRは観光産業を拡大させ、収益を増やす手段となりえる。大阪では、2024年までにIRをオープンさせたいとしているが、自治体が事業者を選定した後にも、政府の承認が必要となる。
松井大阪府知事は、ロイターのインタビューで「国が観光立国の目標を掲げるなか、大阪が観光客誘致のトップエリアになりたい。観光産業をしっかりと大阪の産業の柱の1つに育てていきたい」と述べた。
カジノ運営会社の幹部、ロビイストや政治家など数十人への取材を通じ、カジノ誘致に前向きではない大阪府民の支持を得ようとする外国企業の高度なキャンペーンの姿が明らかになった。
一方、大阪府はカジノ事業者選定に関わる不透明さ、不正を一切排除するため、カジノ事業者との接触には厳格なルールを定めている。
「IR推進局における事業者対応等指針」では、「事業者提案や面会は、原則として庁舎内において2名以上で対応する」とされているほか、事業者との会食・パーティー、事業者から宣伝用のカレンダーや文房具などの事務用品を受け取ることが禁じられている。
現時点で、少なくとも8つの大手カジノ運営業者が大阪府と接触している。そのうちMGM、サンズ、メルコは、日本でのIR事業参入に関し、100億ドル以上の投資をする準備があると表明している。