ギリシャはどこまで再建したのか──答えは「まだまだ」
Greece Boasts Emergency Bailout Exit
緊縮財政が終わるわけではない(写真は、EUが求める緊縮政策に反対するアテネの人々、2015年) Yannis Behrakis-REUTERS
<自立に向けて今後は自主再建に取り組むが高い失業率や人口減少に伴う内需の先細りなど課題も山積>
2010年に経済危機に陥り欧州債務危機の引き金を引いたギリシャは8月20日、EUから受けていた金融支援プログラムを終了した。国際金融史上最大、約790億ドルの支援から脱却したことは、ギリシャの自立への一歩といえる。
今回終了したのは、欧州安定化メカニズム(ESM)からの緊急融資分で、ギリシャが2060年頃までに返済しなければならない約3690億ドルの債務全体から見ればごく一部。とはいえ、ギリシャはこれで、また市場で国債を発行できるようになり、自力で資金調達ができるようになる。ユーロ圏にとっても嬉しい知らせだ。
EU経済・財政委員会のピエール・モスコビシ委員は20日、記者団に対して次のように語った。「3度の支援を渡り歩いたこの8年間は、つらいことも多かった。だがギリシャはようやく、長過ぎた危機から前に進むことができる。最悪の時期は過ぎた」
EUのドナルド・トゥスク大統領も同日、ツイートを投稿。「ギリシャ政府と国民の皆さん、金融支援プログラムの完了おめでとう。多大な努力とヨーロッパの団結によって、皆さんはこの日を迎えた」と祝福した。
支援脱却も「再発」懸念は拭えず
ギリシャ経済が引き続き成長目標を達成していけるように、EUは今後も予算の監視を継続するが、EU、欧州中央銀行(ECB)と国際通貨基金(IMF)のいわゆる「トロイカ」による屈辱的な財政管理は終わる。
それでも、ユーロ圏全体の平均失業率が約8.3%であるのに対して、ギリシャの失業率は19.5%前後。若者にいたっては44%近くにのぼり、厳しい緊縮策と政府の歳出削減は市民に大きな犠牲を強いている。ギリシャ政府の債務は依然、GDP比で177%前後に上る。
さらに、ギリシャは2022年まで基礎的財政収支のGDP比3.5%の黒字を維持することをEUに約束している。つまり、あと数年は緊縮財政を継続しなければならない。エコノミストの中には、ギリシャが今後数年のうちに再び支援を必要とすることになる可能性が高いという見方もある。
シンクタンク「大西洋協議会」のヨーロッパ政治・経済専門家であるバート・オースターベルドは、「支援脱却は景気回復に向けた重要な進歩だ」とした上で、「過剰債務を抱えるギリシャは、今後も巨額の財政黒字を維持していかなければならない。このハードルは高い」と指摘。「欧州金融安定基金に緊急融資の返済が始まる2032年までには、債務削減や債務免除などの負担軽減策が必要になるだろう」