アジア大会開催直前、インドネシアは厳戒態勢 5月以降テロ容疑で283人逮捕
8月1日、ジャカルタ中心部ではアジア大会に向けたテロ対策の演習が行われた。 Beawiharta Beawiharta / REUTERS
<開会までカウントダウンが始まったアジア大会。国際的に注目を集めるイベントを前に、インドネシア政府は威信をかけてテロ対策に取り組んでいる>
インドネシア国家警察のティト・カルナフィアン長官は8月7日、同月18日から首都ジャカルタとスマトラ島パレンバンで開催されるアジア大会に向けてテロ対策を強化してきた成果として、今年5月に発生したスラバヤでの連続爆弾テロ事件以降、テロ容疑者283人を逮捕したことを明らかにした。
インドネシアでは5月13日午前に第二の都市スラバヤ(ジャワ島東部)で市内のキリスト教会3か所が連続爆弾テロの標的とされる事件が発生。自爆犯を含めて13人が死亡した。さらに同日夜スラバヤ近郊で爆弾が爆発して3人が死亡。翌14日にはスラバヤ市警本部でもテロが起きるなど深刻なテロの連鎖に見舞われた。いずれも中東のテロ組織「イスラム国(IS)」を信奉するインドネシアのテロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」のメンバーによる犯行だった。
JADの他にインドネシアには「ジェマ・アンシャルット・タヒド(JAT)」「ヌガラ・イスラム・インドネシア(NII)」などのイスラム教テロ組織の存在が知られている。
スラバヤでの連続テロ事件を深刻に受けとめた政府は、国家警察を中心に治安組織の総力を挙げてテロリストの逮捕拘束、テロ組織の壊滅、テロ事件の未然防止に取り組んできた。
その結果5月のスラバヤ連続テロ事件から約3カ月となる8月6日までに、反テロ法違反容疑などでテロ組織メンバーやその仲間など283人を逮捕したという。
アジア大会期間中のテロを警戒
インドネシアは8月18日から4年に1度開催されるアジア地域のオリンピックと言われる「アジア大会」のホスト国として大会運営に当たる。9月2日までの間日本を含めた45カ国から約15,000人が参加して、41競技465種目で金メダルをかけた選手らの熱い闘いが繰り広げられる。
大会の成功と選手らの安全のためにインドネシア政府は大会期間中に国軍兵士と警察官約4万人を動員して、警戒警備とともにテロ対策にあたるとしている。
インドネシアでは長年国会で反テロ法の改正強化案が議論されてきたが、継続審議となり採決されることはなかった。ところがスラバヤの連続爆弾テロを契機に国会での審議が急展開して進み、5月25日に改正案が可決された。
新たな改正反テロ法ではこれまで警察主体だったテロとの戦いの前面に国軍が関与できるようになったほか、これまでテロ行為につながる証拠がなければ摘発できなかったテロ事犯でも「テロ組織のメンバーである」という理由だけで拘束、逮捕が可能になった。
ティト国家警察長官は「武器の所持や具体的なテロ計画、あるいはテロに結びつく行動などの"証拠"が必要だったためにこれまで多くのケースで摘発が手遅れになりテロが起きてしまったことがある」として新法により事前検挙などでテロを未然に防ぐことが容易になったとの見方を示した。