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対テロ戦争

アジア大会開催直前、インドネシアは厳戒態勢 5月以降テロ容疑で283人逮捕

2018年8月9日(木)16時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)


対テロ特殊部隊「デンスス88」が今月もテロリスト4人を逮捕、家宅捜査を行ったことを伝える現地メディア KOMPASTV / YouTube

指導者死刑判決、組織は違法化

テロ組織JADはISの影響を最も受け、自爆テロによる宗教施設、警察署などの治安施設へのテロ攻撃、刑務所暴動などの各種事件とのつながりが指摘されている。JADの指導者でテロ事件への関与で逮捕、起訴されたアマン・アブドゥルラマン被告は6月22日に南ジャカルタ地裁で死刑判決を受けている。

さらに7月31日に同じ南ジャカルタ地裁は、JADを「テロを引き起こし社会の治安を著しく悪化させる組織」として活動が禁止される非合法組織と認定、解散を命じた。この裁判所の判断に対しJADの実質的なナンバー2の指導者とされるザイニ・アンショリ東ジャワ支部長の弁護団は「地裁判断を尊重し控訴することはない」との姿勢を示した。これによりJADはインドネシア国内での活動が一切禁止され、メンバーであることだけで逮捕される法的根拠もできた。

インドネシアでは国家警察対テロ特殊部隊「デンスス88」が中心となって対テロ作戦、捜査を進めているが、これに加えて警察組織の末端や国軍の各州、各地方の部隊の中にもテロ対策を専門とする組織が整備されつつあり、警戒監視網は確実に広がっているという。

8月18日開幕のアジア大会に向けて8月1日にはメイン会場となるジャカルタ中心部のブンカルノ競技場とその周辺施設、ホテルなどで武装したテロ組織が爆弾を爆発、人質をとって死刑判決を受けた指導者のアマン死刑囚の釈放を要求している、との想定で対テロ訓練を行った。

さらに8月6日には南ジャカルタのポンドックインダゴルフ場でバスジャック、暴動、人質事件とあらゆる不測の事態を想定した対テロ訓練を実施するなど、アジア大会の成功に向けて安全性と万全のテロ対策実施を内外に必死にアピールしている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

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