最新記事

エリトリア

「アフリカの北朝鮮」エリトリアに門戸開放の兆し

2018年7月28日(土)13時20分
コナー・ギャフィー

イタリアの建築家が腕を競った建物が並ぶ首都の街並みは壮観だ Homocosmicos/iStockphoto

<隣国エチオピアとの関係改善でエリトリアの世界遺産に観光客を呼び込めるか>

東アフリカの小国エリトリア。「アフリカの角」と呼ばれる地域の北部に位置し、南隣のエチオピアとは98~00年の国境紛争以降、緊張状態が続いていた。だが、今年4月に就任したエチオピアのアビー首相の主導で関係改善の動きが活発化し始めた。

7月8~9日にアビー首相がエリトリアを訪問。両国は戦争状態の終結を盛り込んだ合意文書に調印した。さらに14日にはエリトリアのイサイアス大統領がエチオピアを訪れ、長年の対立にようやく終止符が打たれた。

エリトリアは秘密のベールに覆われた国だ。エチオピアから正式に独立した93年以降、独立戦争の英雄と奉られるイサイアスが大統領の座に居座り続け、独裁色を強めてきた。

ヨーロッパに大量に流入する難民の多くはシリア人だが、それに次いで多いのはエリトリア人だ。その背景には、「アフリカの北朝鮮」とも呼ばれる国内の過酷な現実がある。イサイアスの強権支配下で恣意的な逮捕や拷問がまかり通り、国民は奴隷状態に置かれていると、人権擁護団体は訴えている。

言論と報道の自由はないに等しく、国境なき記者団による「報道の自由度ランキング」では毎回、北朝鮮と最下位の座を争うレベルだ。

一方で、この国には豊かな観光資源がある。首都アスマラは標高2300メートルの高地に位置し、イタリアの植民地時代に建設されたアールデコや未来派の建物が立ち並ぶ。「アフリカに出現したモダニズム都市」とも言うべき独特の景観が評価され、昨年ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録された。

このままエチオピアとの関係改善が進めば、観光客を誘致できるだろうか。多くの国々はエリトリアへの渡航を制限しているが、国境地帯に平和が訪れれば、制限は緩和されるだろう。エリトリア大使館がある国なら、観光ビザの取得は比較的簡単だ。

旅心を誘う名所が多い

しかしこの国に4回訪れた経験がある国際人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルのスタッフによると、入国審査には手間取りそうだ。「エリトリア政府は外国からの影響を異常に警戒するため、入国理由などをしつこく聞かれる」

よそ者を警戒するのも無理はない。紅海を挟んでサウジアラビア、イエメンと向かい合うエリトリアは、イタリア、イギリス、そしてエチオピアに占領された歴史を持つ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中