最新記事

マレーシア

絶滅危惧種のボルネオゾウ、ヤシの実を食べて射殺される

Endangered Pygmy Elephant Shot Dead

2018年7月27日(金)16時10分
リサ・スピアー

首に研究用の発信機を付けたボルネオ島の希少種ボルネオゾウ。小型なのでピグミー・エレファントとも呼ばれる(2009年) Ahim Rani-REUTERS

<5月にも6頭の死体が見つかったばかり。この争いを止めなければ、小柄でベビーフェイスのボルネオゾウが地球上から姿を消してしまう>

マレーシアのボルネオ島サバ州で、絶滅危惧種のボルネオゾウが射殺された。アブラヤシ農園を荒らされた村人の報復、とみられている。

サバ州野生生物局は、4歳前後とみられる雄のボルネオゾウ1頭の死体が、7月23日に集落の道端で発見されたと発表した。現在犯人を捜索中だと、責任者のオーガスティン・トゥーガはAFPに語った。

「作物を荒らした報復として殺されたのだろう」、とトゥーガは言った。パーム油を取るために栽培されているアブラヤシの実は、ボルネオゾウの大好物だ。

アブラヤシ農園を荒らして射殺されたボルネオゾウ


死因は銃弾が右腹を貫通したことによる大量出血。「腸の一部は引き裂かれていた」、と同局の広報担当者、シティ・ナーエイン・アンプアン・アチェはマレーシアの英字紙ザ・スターに語った。

「ひどい仕打ちだ」、とトゥーガは言った。

毒殺するほど憎い

ボルネオゾウはピグミー・エレファントとも呼ばれる小型のゾウ。ベビーフェイスと大きな耳が特徴で、尻尾は地面につくほど長い。世界自然保護基金(WWF)によれば、野生の生息数は推定でわずか1500頭まで減少している。

ボルネオ島の熱帯雨林に生息し、時折、象牙を狙う密漁者の犠牲になってきた。だが今回は牙が無傷で残されていたことから、密漁者の犯行ではなさそうだという。

マレーシアの熱帯雨林では多くの希少種の生息数が激減しており、ボルネオゾウもその一つ、とAFPは伝えている。植物油として日本でも需要が急拡大しているパーム油を生産するため、人間が森林を燃やして野生動物の生息地をどんどん破壊しているからだ。

今年5月には、マレーシアにあるアブラヤシの農園で、6頭のボルネオゾウが死んでいるのが発見された。野生生物局は、ゾウたちが化学肥料を偶然口にしたのかもしれない、と考えた。あるいは、ゾウたちの水飲み場に毒が盛られていた可能性もあると、ある保護活動家はザ・スター紙に語った。

2017年4月以降に見つかっただけで、少なくとも18頭が殺されている。そのほとんどが、密漁か毒殺によるものだ。

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中