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マレーシア絶滅危惧種のボルネオゾウ、ヤシの実を食べて射殺される
Endangered Pygmy Elephant Shot Dead
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首に研究用の発信機を付けたボルネオ島の希少種ボルネオゾウ。小型なのでピグミー・エレファントとも呼ばれる(2009年) Ahim Rani-REUTERS
<5月にも6頭の死体が見つかったばかり。この争いを止めなければ、小柄でベビーフェイスのボルネオゾウが地球上から姿を消してしまう>
マレーシアのボルネオ島サバ州で、絶滅危惧種のボルネオゾウが射殺された。アブラヤシ農園を荒らされた村人の報復、とみられている。
サバ州野生生物局は、4歳前後とみられる雄のボルネオゾウ1頭の死体が、7月23日に集落の道端で発見されたと発表した。現在犯人を捜索中だと、責任者のオーガスティン・トゥーガはAFPに語った。
「作物を荒らした報復として殺されたのだろう」、とトゥーガは言った。パーム油を取るために栽培されているアブラヤシの実は、ボルネオゾウの大好物だ。
アブラヤシ農園を荒らして射殺されたボルネオゾウAn endangered pygmy elephant is killed in Malaysian part of Borneo island 'out of revenge for destroying crops' https://t.co/E5AShlCHzM
— AFP news agency (@AFP) 2018年7月26日
死因は銃弾が右腹を貫通したことによる大量出血。「腸の一部は引き裂かれていた」、と同局の広報担当者、シティ・ナーエイン・アンプアン・アチェはマレーシアの英字紙ザ・スターに語った。
「ひどい仕打ちだ」、とトゥーガは言った。
毒殺するほど憎い
ボルネオゾウはピグミー・エレファントとも呼ばれる小型のゾウ。ベビーフェイスと大きな耳が特徴で、尻尾は地面につくほど長い。世界自然保護基金(WWF)によれば、野生の生息数は推定でわずか1500頭まで減少している。
ボルネオ島の熱帯雨林に生息し、時折、象牙を狙う密漁者の犠牲になってきた。だが今回は牙が無傷で残されていたことから、密漁者の犯行ではなさそうだという。
マレーシアの熱帯雨林では多くの希少種の生息数が激減しており、ボルネオゾウもその一つ、とAFPは伝えている。植物油として日本でも需要が急拡大しているパーム油を生産するため、人間が森林を燃やして野生動物の生息地をどんどん破壊しているからだ。
今年5月には、マレーシアにあるアブラヤシの農園で、6頭のボルネオゾウが死んでいるのが発見された。野生生物局は、ゾウたちが化学肥料を偶然口にしたのかもしれない、と考えた。あるいは、ゾウたちの水飲み場に毒が盛られていた可能性もあると、ある保護活動家はザ・スター紙に語った。
2017年4月以降に見つかっただけで、少なくとも18頭が殺されている。そのほとんどが、密漁か毒殺によるものだ。
(翻訳:河原里香)
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