野田総務相への情報漏えい、森前長官は関知せず 揺らぐ金融庁の統治
7月25日、金融庁は、野田総務相に対し情報公開請求を事前に漏らしていたことを、当時の長官、森信親氏が関知していなかったことを認めた。金融庁、2014年撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
野田聖子総務相に対し、金融庁が朝日新聞から情報公開請求があったことを事前に漏らしていたことが、波紋を呼んでいる。ロイターの取材に対し、金融庁は当時の長官、森信親氏が情報漏えいを関知していなかったことを認めた。
森氏は金融庁のガバナンス改革を強く訴え、多様な方策を打ち出してきた。今回の事前漏えいは理想と現実のギャップが露呈した形で、金融庁のガバナンスが改めて問われている。
開示決定通知書を事前に手渡す
今回、問題になっているのは、朝日新聞が金融庁に対して行った情報公開請求。朝日新聞は5月2日、野田氏の事務所に今年1月、金融庁担当者を呼んだ際の面会記録について、情報を公開するよう金融庁に求めた。5月31日に公開を決めたが、これに先立つ23日に、金融庁の担当者が総務省大臣官房に開示決定通知書を渡していた。
野田氏は7月24日の閣議後会見で「開示請求者に関する情報を伏せた資料で情報提供され、さらに口頭で開示請求者が朝日新聞であることについても伝達された」と明らかにした。
金融庁はロイターの取材に対し、担当者が情報漏えいに至った経緯について「閣僚の1人に対する記者からの公開請求で、報道される可能性が高いと考え、事前に情報共有しておいた方がいいと判断した」と説明。国会対応の審議官の了承があったことを明らかにした。
通常、国会対応は総括審議官が担当する。当時、総括審議官は佐々木清隆氏(現在の総合政策局長)だったが、金融庁は「イレギュラーだが、当時、国会対応は別の審議官が行っていた」としている。
森氏は関知せず
金融庁幹部は、当時の森長官には総務省に情報提供したとの報告は上がっていなかったと述べている。
3年の在任期間を終え17日付で遠藤俊英氏に長官のバトンを渡したばかりの森氏は、金融行政の対象である金融機関だけでなく金融庁自身のガバナンス改革を唱え、さまざまな施策を打ち出した。
それまでは年1回、事務年度の終わりに金融行政について意見を述べるだけだった「政策評価有識者会議」を、上場企業における社外取締役の経営諮問機関のような位置付けに変更。金融行政全般に目を光らせるご意見番とした。金融行政が「霞が関の論理」に陥らないよう、庁外の有識者の知見を生かすのが狙いだ。
今年7月4日には「国民のため、国益のために絶えず自己変革できる組織へ」との副題を付けた金融庁のガバナンス方針を公表した。組織の論理ではなく、金融庁職員に国民や国益を第一に行動することを求め、組織文化やガバナンスの改革を盛り込んだ。
しかし、組織のトップである長官に重要な情報が上がっていなかった。