トランプの仕掛けた貿易戦争、米国内に生まれる「勝ち組と負け組」
<現金化>
プリゲルさんと兄弟は、今春作付けしたトウモロコシや大豆、綿花の半分以上をすでに売約している。通商問題の影響で価格が下落した場合に備え、利益を前倒しで確保するためだ。6月には、米国の大豆先物取引は10年ぶり低水準に近づいた。
ミズーリ州の綿花売買人バリー・ビーン氏は、顧客農業者の1人が、関税がかけられる可能性を心配するあまり、今春は作付けを始める前にすでに作物の約8割を売約していたと話す。この農業者は、農業保険に加入していない。今もビーン氏に電話をしてきては、まだ栽培中の綿花を追加売却しようとしてくるという。
「やめよう。天候不順でもあれば、あなたは大変なトラブルを抱えることになる」と、ビーン氏はこの顧客を繰り返し説得しているという。
大豆農家の3代目ボビー・アイコックさんは、農場の運営コストを削減し、備品の新規購入を控え、一部農地の貸し出しを始めているという。
関税により穀物価格が下落し、農場の存続が脅かされる事態になった場合のことも考えているという。
「すべて売り払い、農業をやめてマグニチュード7に働きに行く」と、アイコックさんは言う。
「37年間働いて得たものや貯めたものを守りたい。子どもには、私より少しでも楽をしてほしい」
(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)
[ニューマドリード郡(米ミズーリ州) 9日 ロイター]
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