最新記事

アメリカ経済

トランプの仕掛けた貿易戦争、米国内に生まれる「勝ち組と負け組」

2018年7月15日(日)12時27分

<現金化>

プリゲルさんと兄弟は、今春作付けしたトウモロコシや大豆、綿花の半分以上をすでに売約している。通商問題の影響で価格が下落した場合に備え、利益を前倒しで確保するためだ。6月には、米国の大豆先物取引は10年ぶり低水準に近づいた。

ミズーリ州の綿花売買人バリー・ビーン氏は、顧客農業者の1人が、関税がかけられる可能性を心配するあまり、今春は作付けを始める前にすでに作物の約8割を売約していたと話す。この農業者は、農業保険に加入していない。今もビーン氏に電話をしてきては、まだ栽培中の綿花を追加売却しようとしてくるという。

「やめよう。天候不順でもあれば、あなたは大変なトラブルを抱えることになる」と、ビーン氏はこの顧客を繰り返し説得しているという。

大豆農家の3代目ボビー・アイコックさんは、農場の運営コストを削減し、備品の新規購入を控え、一部農地の貸し出しを始めているという。

関税により穀物価格が下落し、農場の存続が脅かされる事態になった場合のことも考えているという。

「すべて売り払い、農業をやめてマグニチュード7に働きに行く」と、アイコックさんは言う。

「37年間働いて得たものや貯めたものを守りたい。子どもには、私より少しでも楽をしてほしい」

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)



P.J. Huffstutter

[ニューマドリード郡(米ミズーリ州) 9日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250128issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月28日号(1月21日発売)は「トランプの頭の中」特集。いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

世界エイズ・結核・マラリア基金が民間調達強化、米W

ワールド

米国務長官、比外相と電話会談 南シナ海での中国行動

ビジネス

米中関係、一段の悪化懸念する在中国米企業の割合が5

ビジネス

米CNNとNBCニュース、一時解雇を計画=CNBC
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 5
    欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ…
  • 6
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 10
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 3
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 4
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 5
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 10
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中