トランプの仕掛けた貿易戦争、米国内に生まれる「勝ち組と負け組」
昨年6月、マグニチュード7メタルズのボブ・プルサク最高経営責任者(CEO)が、米商務省によるアルミニウム輸入に関する調査の一環で行われた公聴会で証言した。プルサク氏は、関税は「われわれの事業が円滑に進むために、最重要なもの」だと証言した。
トランプ氏が関税をちらつかせ、最終的に追加関税を課すまでの間に、さらに多くの投資家が参入した。工場では採用を加速し、最初の生産ラインを6月14日に稼動させた。
「今では、希望がある」と、前出のボディ市長は話す。
<戦々恐々の農業地帯>
一方、ニューマドリード郡の農場では、希望は薄れつつある。
米農務省(USDA)のデータによると、この地域は昨年、ミズーリ州でも最大級の大豆とトウモロコシの生産量を上げた。
米農業大手デュポン
地域の穀物生産者は、収穫した作物のほとんどを海外市場向けにこうした川沿いのターミナルに売っている。地元では需要がほとんどないためだ。
貿易会社は、作物を船に積んでミシシッピ川を下り、海外へと出荷するためメキシコ湾沿いの港まで運搬していく。
中国が6日に発動した報復関税は、米国最大の農業輸出品である大豆を含め多くの米国製品を対象にしている。また、北米自由貿易協定(NAFTA)を巡ってカナダやメキシコとの再交渉が進んでおり、両国との緊張も米国の農業者を直撃する可能性がある。
世界的な穀物の過剰生産で価格が低下した影響で、農業者はこの数年手取りが減少しており、貿易摩擦が起きる前から痛手を被っていた。
USDAのデータによると、昨年は米国産大豆の約半分が輸出された。全体の4分の1超にあたる123億ドル相当が、中国への輸出だった。ミズーリ州からは、20億ドル相当の農産品が輸出されている。
前出の農業者ローンさんは最近、数人の従業員から話しがあると告げられた。精錬所が閉鎖した後に雇ってくれたことには非常に感謝しているが、工場が再開するため、以前の仕事に戻りたいというのだ。
「彼らのために喜んでいる。皆、喜んでいる」と、ローンさんは言う。
「でも、われわれ農家にとっては、まだ喜んでいい状況なのか分からない」