最新記事

映画

『ジュラシック』最新作はホラーに回帰

2018年7月12日(木)19時00分
サム・アダムズ

シリーズ5作目で原点のホラーに回帰 UNIVERSAL STUDIOS AND AMBLIN ENTERTAINMENT, INC. AND LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC.

<『ジュラシック・パーク』の続編が作られるたびに期待外れだった25年間を経て、シリーズのDNAを組み換えたハイブリッド恐竜映画でオリジナルの「恐怖」が蘇る>

「初めて恐竜を見たときのこと、覚えてる?」

3年前に大惨事に見舞われた恐竜テーマパークで運用管理者を務めていたクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、そんな殺し文句で元恐竜監視員のオーウェン(クリス・プラット)を恐竜救出プロジェクトに誘う。

このセリフは観客のノスタルジアにも直球で訴える。タイムマシンに乗って25年前にさかのぼり、シリーズ1作目『ジュラシック・パーク』の魔法を3本の続編が台無しにする前からやり直そう、と。

疾走するガリミムスの群れを造り出した特殊効果は、当時は革命的だったが、今ではごく標準的な技術にすぎない。それでもシリーズ5作目となる最新作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は私たちをもう一度、創造の奇跡で魅了し、新たな美しさと恐怖に身もだえさせようとしている。

かつてパークがあったイスラ・ヌブラル島で火山噴火の予兆があり、クレアとオーウェンは恐竜の救出に向かう。

程なくして、物語の舞台はカリフォルニア州にあるゴシック建築の広大な邸宅へと移る。主人のベンジャミン・ロックウッド(ジェームス・クロムウェル)は、初代ジュラシック・パークの創設者のビジネスパートナーだった。

余命いくばくもないロックウッドは、人生のレガシーの総仕上げに固執している。恐竜のジオラマやトリケラトプスの骨格で飾り立てた自前の自然史博物館だけでは満足できないのだ。

博物館の地下には、30年以上前に恐竜をよみがえらせたときにDNAを抽出した実験室がある。さらに下の階では、島から救出された恐竜たちが檻に入れられている(言うまでもなく、恐竜たちは脱走する)。

最新作の監督に抜擢されたフアン・アントニオ・バヨナは、『インポッシブル』『永遠のこどもたち』『怪物はささやく』などの作品でホラーとアクションを両立させる手腕を高く評価されている。

一方で、道徳観念に縛られない職人でもある。04年末に起きたスマトラ島沖地震の実話を基にした『インポッシブル』では、タイのリゾート地を訪れた白人家族が津波から逃げる姿を生々しく描き、あまりにリアルな映像が議論を呼んだ。しかし、画面に映らない数千人の現地住民の命を奪われたことには無関心だった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中