最新記事

メキシコ

治安最悪のメキシコで「警護いらない」──メキシコ次期大統領

2018年7月5日(木)17時30分
デービッド・ブレナン

新興の左派ポピュリスト政党から次期大統領に選ばれたロペスオブラドール Goran Tomasevic-REUTERS

<国民がもたないものは大統領ももたないという左派アピールは本物か>

メキシコの治安は最悪だ。今年の殺人件数が過去最悪を更新する勢い、というだけではない。7月1日には、大統領選挙と地方選挙、国会議員選挙など約3000の選挙が行われたが、その候補者48人を含む政治家145人が殺されたのだ。メキシコ史上最も血なまぐさい選挙戦だった。現職に取り入って甘い汁を吸っている麻薬組織が、脅威となる対抗馬を葬ったのだ。

そんななか、大統領選を大差で制したのは新興左派政党「国家再生運動」のアンドレスマヌエル・ロペスオブラドール元メキシコシティー市長(64)は、大統領に就任してもボディガードはつけないという。代わりにメキシコ国民に守ってもらう、とAP通信に語っている。

選挙後の7月3日の記者会見でも、「ボディガードはいらない。これからは国民が私の身の安全を確保してくれる」、とロペスオブラドールは語っている。

それは選挙前からの公約だった。ロペスオブラドールは、5月の選挙集会で支持者に言った。「ボディガードに囲まれて移動するなど御免だ」「正義のために戦う男に、恐れるものなど何もない」

政府幹部の減給分を民衆に?

ロペスオブラドールは、貧困層に手厚い社会保障などのポピュリズム(大衆迎合主義)政策と汚職撲滅を訴えて圧勝した。ボディガードをつけないという主張も、「国民と共にある大統領」というイメージ作りにひと役買った。

大統領公邸には住まないと言っているのも同じことだ。公邸は、国民のための芸術施設にするという。大統領専用機は売却し、政府関係者にもプライベートジェットやヘリコプターの使用を止めさせる。「政府が金持ちで国民が貧乏などというのは許されない」が持論だ。

大統領給与も前任者の半額に減らすという。政府高官の減給分を合わせ、浮いたお金は国民に支払う。「教師や看護師、医者、清掃員、警察、兵士、海兵隊員などの給与も上がるだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、今週のウクライナ和平交渉に出席せず 訪

ビジネス

米国、英国に自動車関税10%から2.5%への引き下

ワールド

米財務長官、アルゼンチンに信用枠供与の用意 為替安

ビジネス

FRB議長「解任しない」とトランプ氏、利下げなお要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 2
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 3
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 4
    パウエルFRB議長解任までやったとしてもトランプの「…
  • 5
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 6
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 7
    日本の人口減少「衝撃の実態」...データは何を語る?
  • 8
    コロナ「武漢研究所説」強調する米政府の新サイト立…
  • 9
    なぜ世界中の人が「日本アニメ」にハマるのか?...鬼…
  • 10
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中