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サプリメント

認知症の改善効果をうたう健康サプリにご用心

2018年7月3日(火)15時20分
リック・シュミット (非営利調査報道サイト「フェアウォーニング」記者)

FDAの態度は煮え切らない。報道官も「何しろ20年近く前のことなので、当時の状況はよく分からない」と言葉を濁している。

今になってビンポセチンを禁止すると言われて、サプリメント業界は色めき立った。かつてFDAの捜索を受けたことのあるライフ・エクステンション・ファウンデーション社も反撃に出た。販売禁止は「非科学的で違法」だとする陳情書を特設サイトに用意し、これに署名してFDAと議会に送るよう消費者に呼び掛けたこともある。

FDAにはアルツハイマー病の親を持つ人々の「証言」や、犬にビンポセチンを投与したところ「症状の改善が見られた」という獣医からの手紙も届いた。FDAは製薬会社の言いなりになっていて、ビンポセチンを医薬品として認可して価格を吊り上げるつもりだという陰謀説まで飛び出した。

こうなると消費者は困惑するばかり。ハンク・オーワーダ(81)はアマゾン・ドットコムでビンポセチンを購入した。頭部の手術を受けた後で、サプリが記憶力の改善に役立つのではないかと期待したからだ。しかし飲み始めて2日後に「幻覚」が始まった。服用していた鎮静剤との飲み合わせが悪かったのだろうと彼は考えている。

だが警告文がなかったことには怒りを覚えた。そこで販売元のソース・ナチュラルズに問い合わせたが、アマゾンに連絡して返金手続きをするよう勧められただけだった。それでもオーワーダは、規制強化には賛成できない。サプリは安く手に入る薬の代用品だからだ。

冒頭のペナリームズの場合、ビンポセチンをやめると不快な症状は消えた。でも、今さらビンポセチンの販売を禁止すると言われてもFDAを信用する気にはなれない。「怪しげな薬を売り付けるやからはいくらでもいる。気を付けなくちゃ」と、彼女は言う。

なお日本にもビンポセチンの愛用者は多いが、この夏からネット通販などでの購入は禁止される見込みだ。

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[2018年6月19日号掲載]

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