最新記事

貿易

貿易戦争回避か? 米・EU、貿易障壁削減に向け交渉開始で合意 自動車関税は棚上げ

2018年7月26日(木)12時32分

 7月25日、トランプ米大統領は欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長と会談し、貿易障壁の引き下げに取り組むことで一致したと明らかにした(2018年 ロイター/Joshua Roberts)

トランプ米大統領は25日、欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長と会談し、自動車を除く工業製品に対する貿易障壁の撤廃に向けて取り組むことで合意した。交渉を進める間は自動車関税の発動を控えることも示唆した。

ホワイトハウスで会談した両氏は、関税や政府補助金、非関税障壁の引き下げに向け、「高官級作業グループ」を立ち上げることで合意。トランプ政権による鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税や輸入自動車・自動車部品に25%の関税を課すとの警告を背景に米・EU間の貿易戦争を巡る懸念が強まっていたが、後退する可能性がある。

トランプ大統領とユンケル委員長は会談後、今後の交渉で欧州製鉄鋼・アルミへの関税や、オートバイ、バーボンなど米国製品にEUが課している報復関税の「解消」に取り組むことで合意したと明らかにした。

トランプ大統領は記者団に対し、EUが米国産LNG(液化天然ガス)の輸入を拡大させるとともに、大豆の非関税障壁を削減することで合意したとし、「EUはほぼ直ちに多くの大豆を輸入する」と述べた。

その後ツイッターに、書類の作業は「迅速に進んでいる」と投稿し、「誰も想定しなかったペースで事態の打開が得られた」と述べた。

ユンケル委員長は、交渉が行われる間は新たな関税を発動しないことで双方が合意したと述べた。米国側が提案している自動車関税も含まれる。

「交渉を進める間は、一方が交渉を止めない限り、さらなる関税は控える」とし、「既存の鉄鋼・アルミ関税も見直す」と続けた。

委員長はその後記者団に対し、トランプ大統領が「大きく譲歩」したと語り、大統領が合意を実行に移すことを期待すると述べた。

交渉を進める間、米国の鉄鋼・アルミ関税は引き続き適用されるが、ユンケル委員長は「鉄鋼・アルミ分野の措置の見直しに米国が同意したのは初めてだ」と評価した。

EU当局者は今回の合意を大きな成功と評価し、ドイツのアルトマイヤー経済相は「貿易戦争の回避や多くの雇用保護につながる前進が得られた。世界経済に朗報だ」とツイートした。

合意を受けて、世界の株式市場は上昇した。貿易戦争を巡る懸念が重しとなっていたユーロが買われたことで、ドル指数<.DXY>は下落。米国債価格も下落し、10年債利回りは1か月ぶり高水準の約2.98%となった。

米自動車工業会(AAM)は交渉開始での合意を歓迎し、「貿易障壁を削減するためには関税引き上げではなく交渉がより効果的なアプローチであること示している」と話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中