貿易戦争回避か? 米・EU、貿易障壁削減に向け交渉開始で合意 自動車関税は棚上げ
7月25日、トランプ米大統領は欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長と会談し、貿易障壁の引き下げに取り組むことで一致したと明らかにした(2018年 ロイター/Joshua Roberts)
トランプ米大統領は25日、欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長と会談し、自動車を除く工業製品に対する貿易障壁の撤廃に向けて取り組むことで合意した。交渉を進める間は自動車関税の発動を控えることも示唆した。
ホワイトハウスで会談した両氏は、関税や政府補助金、非関税障壁の引き下げに向け、「高官級作業グループ」を立ち上げることで合意。トランプ政権による鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税や輸入自動車・自動車部品に25%の関税を課すとの警告を背景に米・EU間の貿易戦争を巡る懸念が強まっていたが、後退する可能性がある。
トランプ大統領とユンケル委員長は会談後、今後の交渉で欧州製鉄鋼・アルミへの関税や、オートバイ、バーボンなど米国製品にEUが課している報復関税の「解消」に取り組むことで合意したと明らかにした。
トランプ大統領は記者団に対し、EUが米国産LNG(液化天然ガス)の輸入を拡大させるとともに、大豆の非関税障壁を削減することで合意したとし、「EUはほぼ直ちに多くの大豆を輸入する」と述べた。
その後ツイッターに、書類の作業は「迅速に進んでいる」と投稿し、「誰も想定しなかったペースで事態の打開が得られた」と述べた。
ユンケル委員長は、交渉が行われる間は新たな関税を発動しないことで双方が合意したと述べた。米国側が提案している自動車関税も含まれる。
「交渉を進める間は、一方が交渉を止めない限り、さらなる関税は控える」とし、「既存の鉄鋼・アルミ関税も見直す」と続けた。
委員長はその後記者団に対し、トランプ大統領が「大きく譲歩」したと語り、大統領が合意を実行に移すことを期待すると述べた。
交渉を進める間、米国の鉄鋼・アルミ関税は引き続き適用されるが、ユンケル委員長は「鉄鋼・アルミ分野の措置の見直しに米国が同意したのは初めてだ」と評価した。
EU当局者は今回の合意を大きな成功と評価し、ドイツのアルトマイヤー経済相は「貿易戦争の回避や多くの雇用保護につながる前進が得られた。世界経済に朗報だ」とツイートした。
合意を受けて、世界の株式市場は上昇した。貿易戦争を巡る懸念が重しとなっていたユーロが買われたことで、ドル指数<.DXY>は下落。米国債価格も下落し、10年債利回りは1か月ぶり高水準の約2.98%となった。
米自動車工業会(AAM)は交渉開始での合意を歓迎し、「貿易障壁を削減するためには関税引き上げではなく交渉がより効果的なアプローチであること示している」と話した。