2000億ドル規模の米中貿易戦争 ダメージは低成長の日本に大きく
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7月11日、米中貿易戦争への警戒感が再び燃え上り、金融市場はリスク回避ムードに包まれている。米国が2000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税を適用する方針を表明。中国側の報復措置はまだ示されていないが、同等の対抗策が講じられれば影響は大きい。写真はカリフォルニア州のオークランド港で2011年1月撮影(2018年 ロイター/Beck Diefenbach)
米中貿易戦争への警戒感が再び燃え上り、金融市場はリスク回避ムードに包まれている。米国が2000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税を適用する方針を表明。中国側の報復措置はまだ示されていないが、同等の対抗策が講じられれば影響は大きい。経済が堅調な米国への打撃は限定的としても、低成長の日本には大きなダメージとなりそうだ。
好調米経済は影響限定的
「水を差された」(邦銀)──。貿易戦争への警戒感から世界的な株安が前週まで進んでいたが、前週末6日に米中両国が340億ドル相当の製品に対し25%の関税適用を予定通り実施。いったんの悪材料出尽くし感が広がり、株価が反発し始めた矢先だった。
米政権は日本時間11日早朝、追加で2000億ドル相当の中国製品に10%の関税を適用する方針を表明。円高は限定的だったが、日経平均は一時450円安まで下げ幅を広げ、今週前半の上昇幅を帳消しにしようとしている。
すでに6月18日にトランプ米大統領が、2000億ドル規模の中国製品に対し、10%の追加関税を課すと警告しており、内容は予想外というわけではない。しかし、「少なくとも今週は何もないだろう」(同)との期待は裏切られ、正に貿易戦争へとエスカレートする懸念が市場の雰囲気を暗くしている。
もっとも米国から中国への輸出額は2017年で1303億ドル。2000億ドル規模の追加関税に対抗する枠はない。中国は関税率を高めたり、中国企業への出資を制限するなど、別な措置で対抗すると予想されている。
ただ、トータル2000億ドル程度の影響度であれば、米経済にとっては、それほど大きな規模ではない。
日本総研調査部の副主任研究員、井上肇氏の試算では、間接的な効果を含めても米国にとって0.3─0.4%のGDP(国内総生産)押し下げ効果にとどまる。米経済は今年、減税など政策効果で年率3%近い成長が予想されており、影響は限定的だ。
先行きの不透明感は漂うが「中間選挙を控えているトランプ大統領に景気を腰折れさせる動機はない」(日興アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト、神山直樹氏)ともいえる。