最新記事

日本経済

収入が減る一方で家賃は上がる──日本が過去20年で失った生活のゆとり

2018年7月18日(水)16時50分
舞田敏彦(教育社会学者)

家賃が若年層の生活を圧迫しているのは都市部だけではない nopparit/iStcok.

<生活費のうち家賃が占める割合は、93~13年の20年間で大きく上昇し全国平均で2割近くにまで達している>

生活の基盤である住居は、持ち家と借家(賃貸)に分かれる。2013年の統計によると持ち家は3217万世帯、借家は1852万世帯となっている(『住宅・土地統計調査』)。比率にすると「3:2」で持ち家世帯の方が多い。しかし若年層では借家が多く、世帯主が20代の世帯の9割、30代の世帯の6割が借家に住んでいる。

持ち家は住宅ローン、借家は家賃という固定費用が発生する。生活のゆとりの度合いは収入と支出のバランスで決まるが、後者の代表格は住居費だ。食費や遊興費のように節約はできず、毎月定額を払わないとならない。住居費が収入に占める割合は、生活のゆとりの度合いを測る指標になる。

上記の資料から、借家世帯の月平均家賃と平均年収がわかる。2013年のデータだと前者が5.4万円(I)、後者が358.3万円(II)だ。家賃の年額が年収に占める割合は,(I×12カ月)/II=18.1%となる。20年前の1993年の12.9%と比べて大きく上昇している。収入が減る一方で(414.6→358.3万円)、家賃は上がっているためだ(4.5→5.4万円)。

地域差も大きい。地方より都市部で家賃が高いのは誰もが知っている。都道府県別に「家賃/年収」比を計算し、3つの階級で塗り分けた地図にすると<図1>のようになる。左は1993年、右は2013年のマップだ。

maita180718-chart01.jpg

この20年間で地図の色付きのところが増えている。1993年では色が付いているのは都市部の9県だけだったが、2013年では全県に色が付いている。両端の値を示すと、1993年は8.6%(島根県)~17.2%(東京都)、2013年は13.1%(青森県)~22.3%(東京都)、となっている。

どの県でも収入は減り家賃は上がっているので、こういう結果になる。収入は減るが生活費は上がる。借家世帯に限ったデータだが、国民の生活にゆとりがなくなっていることがうかがえる。今年は『住宅・土地統計調査』の実施年だが、「家賃/年収」比が2割を超える県が多くなっているかもしれない(2013年では東京、京都、大阪のみ)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-中国、欧州EV関税支持国への投

ビジネス

中国10月製造業PMI、6カ月ぶりに50上回る 刺

ビジネス

再送-中国BYD、第3四半期は増収増益 売上高はテ

ビジネス

商船三井、通期の純利益予想を上方修正 営業益は小幅
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 2
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 5
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 6
    米供与戦車が「ロシア領内」で躍動...森に潜む敵に容…
  • 7
    娘は薬半錠で中毒死、パートナーは拳銃自殺──「フェ…
  • 8
    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…
  • 9
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」…
  • 10
    衆院選敗北、石破政権の「弱体化」が日本経済にとっ…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 6
    渡り鳥の渡り、実は無駄...? 長年の定説覆す新研究
  • 7
    北朝鮮を頼って韓国を怒らせたプーチンの大誤算
  • 8
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 9
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 10
    【衝撃映像】イスラエル軍のミサイルが着弾する瞬間…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 8
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 9
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 10
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中