マレーシアで10代中心の麻薬乱交パーティー摘発 犯罪組織がSNSで参加者募る
犯罪組織がアプリで告知
今回摘発の対象となったパーティーは「プラス・ポイント」と呼ばれる犯罪組織が主催したもので、インスタント・メッセージ・アプリの「WeChat(ウィ・チャット)」を利用して告知、募集が行われたという。
参加希望者は1人につき100〜200マレーシアリンギット(約3,000〜6,000円)を参加費として支払い、アルコール類や麻薬が提供され、正午から深夜12時までの間は参加者同士で自由なセックスが可能という。
逮捕者の中には27歳から44歳の犯罪組織メンバーも含まれており、市警では麻薬の入手先や組織の全容解明を目指して鋭意捜査を続けている。
また一日900〜13000リンギットで部屋を提供していたコンドミニウムの部屋の所有者からも事情を聞いているという。
過去にも同様の事件、深刻な麻薬汚染
クアラルンプールでは2016年6月に20歳の男性が5つ星クラスの高級ホテルのスイートルームで麻薬パーティーを開いていたところ、警察に踏み込まれで9人が逮捕され、覚せい剤が押収される事件が起きている。
さらに2017年9月にはアパートの一室で開かれていた麻薬パーティーを警察が急襲し、26人が逮捕され、ケタミンやエリミンが押収された。この時のパーティー参加者には「パーティー・パック」が配布され、中にはエリミンやケタミンが入っていたという。
このパーティーは21歳の若者が企画運営し、20歳の知人が麻薬類を業者から調達していたことから、若者の間で簡単に麻薬が調達できる闇のルートの存在が指摘されていた。
市警は市民に情報提供と子供の監督を呼びかけ
市警のマズラン本部長によるとこうした違法パーティーに10代の参加者が多いことについて「10代では年齢制限があって盛り場への出入りやエンターテインメントの世界で仕事をすることができないため」として、その代替の享楽を麻薬乱交パーティーに求めているとの見解を示した。
その上で「10代の子供をもつ親は自分の子供がどこで何をしているのかもっと関心を持ってほしい」と本部長は麻薬や不純異性交遊に走る子供たちを放任している親に注文を付けた。
今回の2回に渡る摘発はいずれも内偵捜査と一般からの「情報提供」に基づくものであるとして「この手のパーティー、集まりの情報や目撃した場合は速やかに警察に通報してほしい」と市民の協力を呼びかけることも忘れなかった。
マレーシアは麻薬犯罪に厳罰で臨んでおり、最高刑では死刑が適用されることもある。2017年の上半期に麻薬関連犯罪での逮捕者は実に11万3039人に上り、うち5012人は外国人という統計も明らかになるなど、一般市民、外国人による麻薬事件はマレーシアが直面する喫緊の課題であることを示しているといえる。
そして今回のように10代の若者が麻薬に染まる傾向が近年強まっており、政府は予防教育、啓蒙活動とともに警察による摘発強化を進めている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
2025年1月28日号(1月21日発売)は「トランプの頭の中」特集。いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る
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