外資泣かせの北朝鮮ビジネス、また失敗繰り返すか
豊富な鉱物資源、貧弱な輸送ネットワーク、本格的な更新が待たれるインフラや電力設備、それに2600万人近い人口を考えれば、ひとたび経済制裁が解除されれば、北朝鮮が魅力的な投資機会になる可能性はある。
だが、北朝鮮とのビジネス経験を有する複数の韓国企業関係者によれば、政治的な不確実性、貧弱なインフラ、さらには、徐々に解除されるにせよ今後もビジネスの制約要因となり得る国際経済制裁のややこしさなど、多岐にわたるリスクも残る。
北朝鮮向けのビジネス戦略についてサムスングループに助言を提供してきた董龍昇(ドン・ヨンスン)氏によれば、サムスンが北朝鮮事業を拡大できなかった理由の一端は、兵器開発プログラムに転用可能な「軍民両用」品目の製造を制限する米国の制裁があったためだという。
「サムスンは、この国で電子レンジさえ作ることができなかっただろう。なぜなら、電子レンジで使われている技術がミサイル誘導システムの基礎になるからだ」と同氏は語る。
<ハイリスク、ローリターン>
2010年、韓国海軍の哨戒艦「天安」が国境近い水域で沈没した事件を受けて、サムスンはコンピューターソフトだけでなく、テレビなどの家電製品や衣料品製造など、北朝鮮でのビジネスをすべて断ち切ってしまった。韓国政府はこの沈没事件について北朝鮮の攻撃によるものだと非難したが、北朝鮮側は否認している。
政治とは何の関係もない障害もあった。
1999年から2004年にかけて、韓国のテレビ部品メーカーは、サムスンやLG電子<066570.KS>に納入する部品を人件費の安い平壌で製造していた。
韓国の電子部品メーカー側の代表を務めていたビジネスマンのPark Byung-chan氏によれば、北朝鮮側のパートナーが汚職事件に絡んで解雇されてしまい、製造が中断したという。
それ以前にも、輸送コストの高さに悩まされていたという。朝鮮半島の西岸には輸送ルートが1本しかなかったからだ。
「われわれ自身ではどうすることもできない、多面的なリスクがあった」とPark氏はロイターに語った。