知られざる鉄道ファンの聖地ジャカルタ──日本からの中古車両が活躍
外側に手すりが増設されたJR東日本の旧205系車両 撮影:我妻伊都
<インドネシアの首都ジャカルタは、日本で活躍した車両が再利用され、日本の鉄道ファンたちの隠れた聖地になっている>
人口2億5500万人を誇るインドネシア。その首都ジャカルタは1000万人を越える巨大都市として発展し続けている(ともに2015年)。一般的にジャカルタは工場が多く、観光客が訪れるイメージが少ないが、実は日本の鉄道ファンたちの隠れた聖地であることをご存知だろうか。
ジャカルタを走るKRL(首都圏通勤電車)には日本で活躍した車両が再利用され、日々ジャカルタ市民の足としては走り回っているのだ。
横浜線や埼京線、南武線の205系、千代田線の6000系など1000両
現在、多く見かけるの車両は、JRで使われていた205系と呼ばれる車両で、横浜線や埼京線、南武線などで使われた車両だ。他にも東京メトロ千代田線で使われた6000系など合計1000両ほどの日本の車両がジャカルタで再活躍をしている。
東京の八王子在住の会社員の中村さんは、横浜線で通勤するので205系が懐かしいと語る。
「僕はいわゆる撮り鉄なのですが、205系には特に思い入れがあるのでジャカルタでは乗り鉄にもなります。座席はそのまま利用されており、エアコンも車内の蛍光灯もそのまま使われています。横浜線時代と違うのは、窓にUVカットフィルムが貼られていることや車外の扉の左右に手すりが増設されている点です。赤道に近く日差しが厳しいインドネシアであることと、窓ガラスの粉砕防止の意味もあるのでしょう。増設の手すりは、階段で乗車する駅もあるから追加されたものです」
記者が初めてジャカルタを訪れた2011年には車体の行き先表示が日本語のままだったりと車体に日本語が多く残されていたが、現在は、外観も車内も整備されて日本語表記はほどんど見ることはなくなっている。2011年当時は東急電鉄の旧車両もよく見かけた。
アジア通貨危機の財政難から
ジャカルタを走る日本の車両がJR東日本や東京メトロ、東急などと首都圏に偏っているのには理由がある。それは、東京都とジャカルタが姉妹都市(1989年10月23日〜)だからだ。
日本の中古車両がKRLへ導入されたきっかけは、アジア通貨危機でインドネシアが深刻な財政難に陥り、不足した新規車両を補うために東京都から無償譲渡を受けたことがきっかけだった。以降、定期的に導入し現在にいたる。