最新記事

トルコ選挙

エルドアン大統領再選、トルコはもはや民主主義ではない

2018年6月26日(火)15時30分
デービッド・ブレナン

もうエルドアンにできないことはない(選挙前日の6月23日、イスタンブールに張り出されたエルドアンのポスター) Alkis Konstantinidis-REUTERS

<もともと独裁的だったエルドアンが、今より権限を拡大した大統領職に再選された。司法も行政も支配下に置き誰のチェックも届かない>

トルコ国営アナドル通信は、6月24日に投開票された同国の大統領選挙で現職のレジェップ・タイップ・エルドアンが勝利したと報道。独裁的指導者が過半数の票を獲得して再選された。

主な対立候補だった共和人民党(CHP)のムハレム・インジェ氏が正式に敗北を認めたことで、エルドアンの続投が決定。昨年4月の国民投票で僅差で承認された、大統領権限強化の新体制に移行する。

アナドル通信は開票率99%の時点で、エルドアンの得票率が53%、次点のインジェが31%と報道。インジェはこれらの結果を受けて、投票が公平に行われなかったと示唆した。投票率は87%と高水準を記録したものの、今回の選挙をめぐっては数々の不正や有権者への嫌がらせが行われた疑惑がある。それでもインジェは25日の記者会見で、公正な選挙ではなかったが結果は受け入れると語った。

エルドアンは25日早朝、首都アンカラにある与党・公正発展党(AKP)の本部から支持者に向けて誇らしげに勝利宣言。「8100万人の国民ひとりひとりが今回の選挙の勝者だ」と語り、トルコは世界に「民主主義の教訓」を与えたと称えた。さらに彼は「自らの敗北を隠すために選挙結果に疑問を呈し、民主主義に影を落とす者が出ないことを願う」とも語った。

さらなる強権体制へ

トルコでは2017年4月に、大統領の権限拡大のための憲法改正の是非を問う国民投票が実施された。賛成51%の僅差で承認された(有権者のほぼ半数は反対票を投じた)憲法改正により、今回の選挙後から大統領がこれまで以上に大きな権力を振るう新体制に移行する。

新体制の下では、議会は大統領府を中心とした制度となり、首相職は廃止されて大統領であるエルドアンが行政の長となる。また大統領は上級判事や閣僚、副大統領の任命権も持ち、大統領権限の監視を任務とする者たちを完全に支配下におさめることになる。

大統領はまた、司法制度に自由に介入できる上、非常事態令も自由に公布できる。2016年7月のクーデター未遂を受けてエルドアン大統領が発令した非常事態令は、延長を繰り返し今も解除されていない。また新たな憲法の下では、現在64歳のエルドアンが3期目を目指して2023年の大統領選に立候補する(そして2028年まで大統領の座を維持する)ことも可能だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者、今週訪米へ 米特使と会

ビジネス

欧州株ETFへの資金流入、過去最高 不透明感強まる

ワールド

カナダ製造業PMI、3月は1年3カ月ぶり低水準 貿

ワールド

米、LNG輸出巡る規則撤廃 前政権の「認可後7年以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中