刑務所内から犯行指示のテロ指導者に死刑判決 報復テロの危機高まるインドネシア
判決後にテロ組織メンバー射殺事件も
テロの矛先が治安関係や政府関係施設に向く中、過激なテロ組織の指導者であるアマン被告に死刑判決が出され、弁護士によればアマン被告は控訴するつもりがなく、このまま刑が確定する可能性もある。そうなると過激なテロがさらに先鋭化することも予想されている。
実際、判決直後の22日午後2時半ごろ、ジャカルタ西方スバンで車内のカバンに爆弾らしきものを隠し持っていた男性1人を国家警察の対テロ特殊部隊「デンスス88」の隊員が射殺する事件も起きた。警察によるとこの男性はJADのメンバーで27日に実施される予定の統一地方選挙当日に爆弾テロを計画していたというが、詳細は明らかになっていない。
現場では付近の人が銃声とともに爆発音を2回聞いており、自爆しようとした可能性もでている。
22日の判決公判では南ジャカルタ地裁は約400人の武装警察官が警備し、法廷内にも小銃を持ち覆面をした部隊が待機するなど厳重な態勢の中で判決が言い渡された。閉廷して被告が退廷する際は、覆面部隊がアマン被告の周囲を2重に固めて警戒にあたった。
政治の熱い年だけにテロ厳重警戒も
インドネシアは6月27日には全国17州、115県、39市で州知事などの地方自治体首長、地方議会議員を選ぶ「統一地方選挙」の投票が一斉に行われる。さらに8月10日までには、2019年実施の大統領選挙の正副大統領候補の登録が締め切られる。そして2019年は大統領選に加え国会議員選挙も実施されるという重要な政治日程を控え、国中が熱い政治の年を迎えつつある。
6月22日に射殺されたJADメンバーとされる男が統一地方選を狙ったテロを計画していた、と警察が見ているように、政治日程の節々でテロを警戒する必要がでてくる。特に8月17日のインドネシア独立記念日には式典が個別にそれぞれ行われる政府関連施設や警察施設は特に厳重な警備態勢で臨むことが求められるだろう。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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