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貿易戦争

メキシコの対米報復関税、米中間選挙の共和党議員を標的にしていた

2018年6月7日(木)10時35分

6月6日、メキシコ政府が導入を決定した対米報復関税が、対象となる生産品を多く輸出し、与野党の支持率が拮抗する米国の複数の州で、11月の中間選挙に向けた与党共和党の選挙戦をかく乱する要因となっている。写真は売り場に並ぶりんご。メキシコシティで昨年11月撮影(2018年 ロイター/Henry Romero)

メキシコ政府が導入を決定した対米報復関税が、対象となる生産品を多く輸出し、与野党の支持率が拮抗する米国の複数の州で、11月の中間選挙に向けた与党共和党の選挙戦をかく乱する要因となっている。

メキシコ政府は今週、米国の鉄鋼・アルミニウム輸入関税への対抗措置として、米国産の鉄鋼のほか、豚肉やウィスキーなどを含む広範な品目に関税をかけると発表した。

メキシコ政府の高官は匿名を条件に、対象品目は約30億ドル相当と、米国の輸出に占める割合は小さいが、影響を受けやすい米共和党員に的を「かなり絞った」形になっていると明かした。

別のメキシコ政府当局者は「この問題に、最高レベルの政策決定者が最優先課題として対処することを促す狙いがあった」と説明した。

メキシコの対米関税はワシントン州のリンゴ生産者、カリフォルニア州のチーズ製造業者、アイオワ、バージニア、コロラド各州の豚肉生産者に打撃を与える可能性がある。

リンゴはメキシコによる関税の対象となった71品目の1つで、20%の税率が適用された。ワシントン州は昨年、1億2600万ドル相当のリンゴをメキシコに輸出。北米自由貿易協定(NAFTA)により関税は免除されていた。

ワシントン州の第8選挙区(下院)の民主候補、キム・シュリアー氏は、共和党の対立候補、ディノ・ロッシ氏について「トランプ大統領の危険な政策」の責任があると主張、地元経済が痛手を被ることになると批判した。

ただ、ロッシ氏の選挙運動責任者は「ワシントンの農業経営者や消費者、企業に税金を課す貿易障壁の撤廃を支持する」とし、トランプ大統領の通商政策と距離を置く立場を示した。

中間選挙では下院選挙区のうち、30余りに上る地区で激戦が見込まれている。民主党が下院の過半数を獲得するには、23議席を積み増す必要がある。

メキシコの対米関税は豚肉の複数の部位も対象となった。豚肉は共和党が民主との接戦を強いられているアイオワ、コロラド両州の輸出量が多い。

米国産粉チーズに対するメキシコの関税はカリフォルニア州第10選挙区の乳製品生産高に悪影響を与える可能性がある。同選挙区では現職のジェフ・デナム議員(共和)が厳しい選挙戦に直面するとみられている。

[ロイター]


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