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エネルギー対立から連携へ OPECと米国シェール業界の関係に変化
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6月14日、石油輸出国機構(OPEC)と米国のシェールオイル業界は、ほんの数年前にはあからさまに敵意をぶつけ合う関係だった。しかし今では両者の間で、原油の需給バランスを保つには連携が欠かせないとの理解が広がりつつある。写真はロシアの油田で2016年撮影(2018年 ロイター/Sergei Karpukhin)
石油輸出国機構(OPEC)と米国のシェールオイル業界は、ほんの数年前にはあからさまに敵意をぶつけ合う関係だった。しかし今では両者の間で、原油の需給バランスを保つには連携が欠かせないとの理解が広がりつつある。
来週OPECとロシアなどがウィーンで産油国会合を開く際にも、シェール企業の経営トップがOPEC加盟国の閣僚と意見を交換する見通しだ。
原油価格はこの1年間で40%以上も上昇。油価上昇は産油業界にとって増益要因だが、電化が進む中で石化燃料の需要を冷やすマイナス面も持つ。
米シンクタンクの外交問題評議会でエネルギー安全保障・気候変動プログラムのディレクターを務めるアミー・メイヤーズ・ジャフェ氏は「原油価格の持続的上昇が世界経済にとって大きな問題となる段階に入りつつある。OPECとシェール業界は生産以外にもより大きな課題を抱えている」と指摘した。
OPECとシェール業界は今年に入ってから既に2回話し合いの場を持っており、来週の産油国会合で3回目の会合が設定されている。最適な原油の需給を見出すことが重要な議題になる。
シェールオイル開発の先駆的存在であるコンチネンタル・リソーシズの創設者で富豪のハロルド・ハム氏が、ヘスのジョン・ヘス最高経営責任者(CEO)やパイオニア・ナチュラル・リソーシズののスコット・シェフィールドCEOとともにOPEC加盟国の閣僚と懇談する予定。
こうした懇談は、産油国会合自体とは別に行われる。
コンチネンタルのハム氏は2014年にはOPECを「牙をなくした虎」と揶揄したが、その後は発言のトーンが変わった。今は収益性や生産抑制を重視するよう同業他社への働き掛けを始めており、先月はサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコがヒューストンで開いた取締役会に出席した。
もっともシェール業界は反トラスト法によって生産面での協調を禁じられており、OPECと組んで原油相場の急激な変動や上昇を抑えたいとの望みは実現が難しい。
2015年の米石油輸出解禁に尽力したハイディ・ハイトキャンプ上院議員(民主党)は「いかなる形の協調についても討議することはない。石油需要の見通しについて話し合うだけだ」と述べた。
実際のところ、米石油大手でもセンテニアル・リソーシズ・デベロップメントのマーク・パパCEOやコノコフィリップスのライアン・ランスCEOは懇談への出席を計画したものの結局見送った。
ハイトキャンプ氏は「(米シェール企業は)独立性を保ち、米国の利益を最優先すると期待している。われわれがOPECに加盟することはないし、OPECとは厳しく競っていく」と強調している。
とはいえ、そうした競争関係にあってもOPECとシェール業界は一蓮托生だという認識を強めている。外交問題評議会のジャフェ氏は「油価が跳ね上がれば、消費者は電気自動車に乗り換えるだろう」と警告した。
(Ernest Scheyder記者)
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