最新記事

貿易戦争

トランプ政権、EU・カナダ・メキシコに鉄鋼・アルミ関税 各国は対抗措置 

2018年6月1日(金)09時36分

5月31日、米政府はカナダ、メキシコ、EUに対し鉄鋼・アルミ輸入関税を適用すると発表した。写真はペンシルベニア州の製鋼所で3月撮影(2018年 ロイター/Aaron Josefczyk)

米政府は31日、カナダ、メキシコ、欧州連合(EU)に対し鉄鋼・アルミニウムへの輸入関税を適用すると発表した。

適用は午前0時(6月1日0400GMT=日本時間同日午後1時)から。税率は鉄鋼が25%、アルミニウムが10%。米政府はカナダ、メキシコ、EUに対しては暫定的に2カ月間、適用除外としていた。

ロス商務長官は「解決が必要な他の案件もあるため、カナダとメキシコ、およびEUと引き続き協議したい」と述べた。

トランプ大統領は3月に鉄鋼とアルミニウムに対する関税措置を発表したが、一部の国・地域は適用を除外していた。

米国と北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を進めているカナダとメキシコはすぐさま反応した。

カナダのフリーランド外相は、対抗措置として米国からの輸入品166億カナダドル(128億米ドル)相当に関税をかけることを明らかにした。

メキシコは鉄鋼製品や農業生産品を含む幅広い品目に対し「同様の」対抗措置を講じる方針を表明。ビデガライ外相は、米国の関税措置は「不公正で一方的」としながらも、メキシコはNAFTA再交渉協議を継続するとの姿勢を示した。

メキシコ経済省によると、対象には鉄鋼や豚の脚、リンゴ、ブドウ、チーズなどが含まれるという。

S&P500の加工食品・食肉産業サブ指数<.SPLRCFOOD>は2%下落した。

メキシコペソは約1%安、カナダドルは約0.6%安。ペソは対ドルで一時、約15カ月ぶりの安値を付けた。

EUの執行機関である欧州委員会のユンケル委員長は「世界貿易に関連する一方的な措置の導入は容認できない」とし、対抗措置を導入すると表明。欧州委のマルムストローム委員(通商担当)は世界貿易機関(WTO)に不服を申し立てる方針を示した。

EUは米共和党議員の政治基盤を狙い、ハーレーダビッドソンのバイクやバーボンへの関税を示唆。米ハーレーダビッドソンの株価は2.17%安、バーボンメーカーの米ブラウンフォーマンが2.1%安。

EU加盟国は、米国が関税の適用除外措置を延長しないならば米国の輸出品28億ユーロ(34億ドル)相当に税をかけるとの欧州委の計画を総じて支持している。米国の関税の対象となる可能性があるEU輸出品は金額ベースで64億ユーロ(75億ドル)となっている。

一方、米国商工会議所のトム・ドナヒュー会頭は同会議所理事会に宛てた書簡で、現在の通商政策が「経済発展」を脅かし、200万人超の雇用が失われる恐れがあると警告した。ロイターが書簡を確認した。

[ワシントン 31日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル、低調な米指標で上げ縮小 円は上

ワールド

ドイツ、ロシアの偽情報拡散に警告 23日の総選挙控

ワールド

トランプ氏、5月にモスクワ訪問せず ロシア・ウクラ

ビジネス

再送-AIが投資家の反応加速、政策伝達への影響不明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中