トランプみごと!──金正恩がんじがらめ、習近平タジタジ
こうして金正恩をまず、「がんじがらめにする」ことに、トランプは成功した。
習近平をも身動きできないようにしたトランプの「すご腕」!
こうなると、習近平としては、もう何もできない。自ら積極的に「さあ、北京にいらっしゃい」とは言えないのである。
「中国のせい」ではないことを知りながら、あえて「中国のせい」にしたトランプ!
ただ者ではない。
おまけに5月26日の今年に入ってから第2回目の南北首脳会談のあと、文在寅大統領は米朝首脳会談のあと「南北米」で朝鮮戦争の終戦協定に入ってもいいと27日に言った。
となると、朝鮮戦争で最も多くの兵士を参戦させ、また多くの犠牲者を出した中国は、その終戦協定という平和体制への移行に発言力を持てなくなってしまう。
しかし「米朝は対話のテーブルに着け」と言い続けてきたのは中国だ。
今まさにそのテーブルに着こうとしているのだから、中国としては文句が言える筋合いではない。
こうしてトランプは、習近平の口をも閉ざさせてしまったのである。
これが十分に練り上げた戦略として編み出されたものか、あるいはトランプのビジネスマンとしての「勘」が、結果的にここまで行ってしまったのかは、わからない。いずれにしても、トランプの圧勝だ。
金正恩がアメリカを選ぶ可能性
もしトランプが北朝鮮の「完全な非核化の程度」に満足して莫大な経済支援をしたとすれば、金正恩なら、「習近平からトランプに乗り換える」くらいのことは、やるかもしれない。
北朝鮮にとって中国は「1000年の宿敵」だ。
どんなに中朝軍事同盟があり、中朝蜜月を演じたとしても、それはアメリカへの威嚇であって、その威嚇が必要となくなれば、中国は「いざという時の後ろ盾」程度の位置づけになり、存在感を失うだろう。
北朝鮮は「中国の覇権」を抑え込む駒
こうして、「中国の覇権」を抑え込むために、トランプは十分に金正恩という駒を駆使しているのかもしれない。
『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』――。
筆者はこの視点で北朝鮮問題を追いかけてきたが、ここに来て、「トランプの圧勝」に気が付き、圧倒されている。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。