「反共」から「統一」まで 韓国とハリウッドが描いた北朝鮮とは?
また、同じく2013年に日本公開された「レッド・ドーン」は、北朝鮮がアメリカを占領するという設定だ。ある日、空からたくさんのパラシュート部隊が下りてきてそのまま全米を占拠し始め、山中に逃げ込んだ主人公は友人数人と戦う。実はこの映画、1984年公開の「若き勇者たち」という映画のリメイク。オリジナル版のストーリーでは敵国はソ連、キューバ、ニカラグアの共産圏連合軍という設定だった。それを2009年のクランクイン当時、中国の人民解放軍が占拠するというシナリオに書き換えたものの、これが中国側からのクレームで2011年に北朝鮮に変更されることとなった。撮影はすでに終了していたため100万ドルの追加予算をつぎ込み、作品中のシンボルマークや国旗を書き換えたそうだ。
このような修正は、2011年に発売されたシューティングゲーム「ホームフロント」でも行われた。「地獄の黙示録」の脚本家がゲームシナリオを担当したのだが、こちらも当初は中国がアメリカを占拠した展開だった。しかし、途中から北朝鮮を主な敵として制作される事となった。
2014年には問題作「ザ・インタビュー」が公開された。各国で公開中止や日本でも公開はされずともニュースや特集が組まれたこともあり題名は聞いたことがあるかもしれない。あるトーク番組の司会者とプロデューサーが、金正恩委員長にインタビューを行うことになる。CIAはこれを機会に金正恩の暗殺を企てるが、司会者は金正恩とすっかり友達に。プロデューサーも北朝鮮のお付きの女性士官と恋仲になるのだが、最終的にはインタビュー中継を行って金正恩の暗殺も見事成功。北朝鮮は民主主義化していく──という内容だ。内容もさることながら、ジャンルとしてもドタバタコメディーということからちょっとアブナイ笑い満載の映画だ。
「反共主義」という言葉はすっかり過去のもの──と思いがちだが、こうしてみるとその精神は残っているようだ。世界の工場となった中国を題材にすることが半ばタブーとなった現在、北朝鮮は"得体の知れぬ共産主義国家"として、ハリウッドにいまだ残された「反共主義」精神のはけ口なのかもしれない。