最新記事

映画

「反共」から「統一」まで 韓国とハリウッドが描いた北朝鮮とは?

2018年5月27日(日)20時30分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)


現実の交流を映画化した作品



「ハナ 〜奇跡の46日間〜」 OdessaEntertainment / YouTube

男性主演の作品が続いたので、ここで女性が主役の統一映画を紹介しよう。日本映画やハリウッド映画にも出演しているぺ・ドゥナ主演の「ハナ 〜奇跡の46日間〜」だ。2013年に日本でも公開された。これは1991年に千葉県で開催された第41回世界卓球選手権で初めて韓国と北朝鮮が南北統一チームとして一緒に出場し、優勝した実話を基にしたストーリーだ。

大会前に突然統一チームでの出場が決まり、北朝鮮との合同生活に困惑する韓国チーム。南北の選手はお互い反発するも、徐々に友情が芽生える。劇中、要所要所で互いのカルチャーギャップが見られるのが興味深い。男子チームの中に金日成国家主席と同名のチェ・"イルソン"という選手がいて、韓国チームがそれを北朝鮮チームの前でおちょくるギャグや、北朝鮮側の監視員が常に同行してお互い仲良くなりすぎないように見張っているエピソードは分断国家ならではと言える。こちらも上記で紹介した映画「義兄弟」のように、クライマックスでは南北の監督同士兄弟と呼び合い、選手同士姉妹と呼び掛けている。

その他にも数多くの統一映画は存在するが、全体的に男性同士の友情を描いた作品が多く、最近では、北朝鮮=喧嘩が強くクールなイメージのかっこいい俳優をキャスティングし、韓国=庶民的で親近感があり北朝鮮側の俳優より年上の俳優をキャスティング、という傾向にあるようだ。これも、兄弟で言えば「韓国は北朝鮮を見守る兄である」というイメージなのだろう。

ハリウッドの目から見た北朝鮮像は?

では、反対にアンチ統一映画と言えばどんな作品があるだろうか。北朝鮮をテロリスト国家として描くのは韓国よりも欧米の方が多いようだ。昔はハリウッドのアクション映画ではソ連や、ロシアが仮想敵国として登場することが多かったが、近年は北朝鮮が敵国として出てくる作品を見る機会が多くなった。

2013年に日本でも公開された「エンド・オブ・ホワイトハウス」の中では、朝鮮半島の統一を要求するテロリストが韓国首相のホワイトハウス訪問のタイミングでテロ行為を行う。爆弾でゲートを壊して侵入を試み、ホワイトハウスの周りで無差別テロを行ったりとやりたい放題だ。あっさりアメリカ大統領を人質にしたテロリストと主人公の元シークレットサービスの男との死闘が見どころだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日銀総裁、中立金利の推計値下限まで「少し距離ある」

ワールド

与党税制改正大綱が決定、「年収の壁」など多数派形成

ビジネス

日経平均は反発、日銀が利上げ決定し「出尽くし」も

ワールド

米国土安全保障省、多様性移民ビザ制度の停止を指示
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中