初の米朝首脳会談の開催地シンガポール なぜ選ばれた? 会談の行方は?
金正恩は中国経由で訪問か
シンガポールは北朝鮮の平壌から約4700キロの距離にある。これが金委員長専用機である旧式のソ連製「イリューシン62型」の改造機「チャムメ(北朝鮮の国鳥・オオタカ)1号」の最大航続距離(約5000キロ)の範囲内であることも、会談場所としてシンガポールが選ばれた理由といわれている。
もっとも航続距離だけではなく、整備の面や飛行コースはどこを飛ぶかなどに関しても検討調整が続いているものと見られている。
その上で同専用機での長距離飛行には不安が残ることから、中国・北京経由で、(1)中国の最新鋭の航空機とパイロットを借用する、(2)給油と整備・点検を行う、(3)米朝首脳会談にオブザーバーのような形で「参加」することを検討中とされる習近平国家主席と同じ航空機を利用する、などが想定されている。
いずれにしろ金正恩委員長は現在の地位に就任後初の中国、韓国以外への海外訪問となる。それも初の資本主義国家への訪問であり、初の長距離飛行での外遊でもある。
トランプ大統領との直接会談そのものが歴史的なものだけに、「初尽くし」の会談となるのは間違いないだろう。
警備は最高度の厳戒態勢に
世界屈指のシークレットサービスに守られたトランプ大統領と朝鮮人民軍の屈強な兵士らにより完全に防護されている金正恩委員長。それぞれの首脳を守る両国警護陣に加えてシンガポール軍と警察により6月12日前後はシンガポールの会談場所、移動経路などは最高度の警戒・警備態勢がとられることは間違いない。
道路封鎖、上空の飛行禁止、付近の建物などの捜索、通行人などの所持品検査など市民生活は大幅に制限されることになるだろう。
シンガポールは徴兵制だが、首相官邸警備や国際会議の際の外国要人の警護や警備など重要な局面にはネパールの山岳民族による傭兵グルカ兵が投入されることが多い。これは「民族間の紛争に中立的なグルカ兵登用」を建国の父リー・クアンユー首相が決めて以来とされており、米朝首脳会談の最高度の警備にもグルカ兵が投入される可能性は高いとみられている。
両首脳周辺、会議場周辺には米朝の警護陣、その周辺にシンガポールのグルカ兵、そして周辺海域には米海軍や米空軍が待機するといような建国以来最大の緊張状態の下で、シンガポールは世界が注目する米朝首脳会談の6月12日を迎えようとしている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
2025年1月28日号(1月21日発売)は「トランプの頭の中」特集。いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る
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