中国の抗日戦争記念館元職員・方軍氏の告発──同館館長らの汚職隠蔽
「中国共産党の本質は今も昔も変わっていない!」
「中国共産党の本質は、今も昔も変わっていない!」と方軍氏は怒りを露わにする。
彼は筆者がアメリカのVOA(Voice of America)の番組に出演した時に話した言葉を、ネットで視聴しているとのこと。そして続けた。
──自分は歴史のことは分からない。だから『毛沢東 日本軍と共謀した男』の中に書いてある史実に関しては、正確なコメントをすることはできない。しかし、中国共産党の歴史における役割も今の姿勢も、結局は何も変わっていない。あなた(遠藤)は歴史的観点から中国共産党の欺瞞を暴いた。私は腐敗という現場から、その欺瞞性を訴えている。
日中戦争の時に中国共産党は日本軍と結託して強大化し、日本軍を利用して蒋介石・国民党軍を倒したと、あなたは書いている。それとは次元が違うかもしれないが、「抗日記念館が日本人におもねり、日本人から利益を得ている」ということに類似のものを感じる。少なくとも中国共産党は人民を騙し、人民の血と肉を食い物にしていることに変わりはない。
欺瞞性は今も昔も変わらない。腐敗は蔓延し、腐敗のないところを見つけることは困難だ。それを訴えようとしたら、こうして解雇されるのだ。それでいて習近平政権は腐敗撲滅を政権スローガンにしている。この欺瞞性を、どうか訴えてほしい。あなたに全てを委ね、全ての希望を託したい。
「中国大陸という孤島」で闘う人たちへ
以上が方軍氏からの訴えである。もし筆者のコラムが海外の多くの人に知られれば、中国政府はその時になって初めて動くだろうと、方軍氏は期待している。
なお、中国共産党は「日中戦争の時に勇猛果敢に日本軍と戦ったのは中国共産党軍で、日本軍を敗戦に追いやり中華人民共和国を建国した」という虚偽の歴史(抗日神話)を創りあげ、何とか中国共産党による一党支配体制を維持しようとしている。したがって、腐敗行為を行なったのが、その抗日戦争記念館の館長だったりすると、「抗日神話」が崩壊する。そのことを恐れて、方軍氏の口を封じようとしたのではないかと筆者には映る。
拙著がこんな形で、「中国大陸という孤島」で民主と自由を求めて闘う人たちの何らかの役に立ち、勇気とチャンスを与えることができたのだとすれば、少なくとも書いた価値はあったということかもしれない。
習近平政権は外からは盤石に見えても、一部の一般人民には不満が渦巻いている。こういった人たちの受け皿となって真実の声を拾い、国際社会に伝えていくことができればと思っている。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。