最新記事

内部告発

中国の抗日戦争記念館元職員・方軍氏の告発──同館館長らの汚職隠蔽

2018年5月14日(月)13時28分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

方軍氏が内部で館長らの腐敗を指摘すると、方軍氏は窓際に追いやられ、いかなる業務も与えられないようになった。結果「退養」(早期退職)という形で解雇されるに至ったわけだ。

その後、張承均・元館長と魏永旺・元副館長は使途不明金があったとの咎(とが)で中国共産党北京市委員会宣伝部の処分を受け懲戒免職となったが、同委員会の中に張承均・元館長とつるんでいた者がおり、元館長らには給料をそれまで通り支払っているという。組織ぐるみだと、方軍氏は怒りを強めている。

本来、第三者がこのような状況を公開する場合は、相手側(館長側)の取材もしなければならないだろうが、「使途不明金」の名目で館長らが処分を受けたところを見ると、少なくとも何らかの金銭的な不正行為を館長側が行っていたことは確かだろうと判断される。

抗日戦争記念館と某日本人との結託

方軍氏がもう一つ強い怒りを以て訴えていることがある。

それは張承均・元館長らが免職処分となったあとに館長となった李宗遠氏が某日本人から賄賂もどきを受け取っていることだという。「某日本人」が抗日戦争記念館に日本製の車を献納した。すると李宗遠館長は、それを個人で譲り受けた。

記念館の車なので、その館長が使用するのは、そう大きな問題ではないと思うのだが、方軍氏に言わせれば、「抗日戦争記念館」なのに、その「日本」とねんごろになって、怪しい関係を築いているというのである。

というのは、抗日戦争記念館は別の「某日本人」との関係も非常に緊密で、記念館の美しい女性ガイド(中国人)を、その別の「某日本人」の息子に嫁がせた。結婚後、彼女は日本国籍を取得した。

方軍氏は言う。

──中国にはほかに南京大虐殺記念館や東北抗日烈士記念館があるが、そこでも同様のことが起きていないとも限らない。何が抗日だ! 何が抗戦献金だ! 抗日記念館など、抗日ドラマの滑稽さと同様に、「たわぶれ」に過ぎない。

──中国では赤十字の献金だろうと地震などの災害献金だろうと、何一つ用途の明細を公開したことがない。こうして中国人民と海外の華人華僑たち同胞から「抗日戦争」の名の下に集めた金は、すべて館長のポケットの中に入り、私腹を肥やす元手となっている。人民の血と肉で幹部が私腹を肥やす。これが中国だ!「腐敗万歳!」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 6

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中