イランから撤退せよ──トランプ政権からの「指図」にドイツ企業反発
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独フランクフルトのビジネス街。アメリカが対イラン制裁を再開すれば、イランと取引を行うヨーロッパの企業も制裁対象になる可能性がある Ralph Orlowski -REUTERS
<トランプがイラン核合意からの離脱を表明したのと同日、ドイツに着任したばかりの米大使が「ドイツ企業はイランから撤退せよ」と上からツイート>
ドナルド・トランプ米大統領が新たに任命した駐独米大使が、着任後わずか数時間でドイツ企業を敵に回す発言をし、その外交手腕に早速疑問符が付いている。
その大使、リチャード・グレネルは5月8日にドイツの首都ベルリンに歓迎された直後、トランプが同日に発表しヨーロッパに衝撃を与えたイラン核合意からの離脱を持ち出してドイツ企業を脅迫した、と米紙ワシントン・ポストは報じている。
核合意から離脱して対イラン制裁を復活させる、とするトランプの決定は、ヨーロッパの企業を苦境に立たせている。ヨーロッパからの核合意への参加国である英独仏の3カ国は、アメリカ抜きでも合意を維持する意向だが、イランと取引を続けるヨーロッパの企業も、アメリカによる経済制裁の対象になる恐れがある。
駐独米大使館が新大使の着任を公式ツイッターで発表した1時間後、グレネルは自身のツイッターに投稿した。「イランで事業を行っているドイツ企業は直ちに撤退すべきだ」
米独関係は悪化の一途
これを米大使による脅迫、と受け止めたドイツ企業のトップらはすぐに反発。「大使に向かって外交の指南をするのは私の役目ではないが、彼(グレネル)は指導を受けたほうがよさそうだ」と、中道左派の連立与党、ドイツ社会民主党(SPD)のアンドレア・ナーレス党首は言った。
ドイツ・イラン商工会議所のマイケル・トックス議長も批判した。「ドイツの外務大臣は米大使に対し、ドイツ企業に指図することも脅迫することもあなたの任務ではない、と忠告するはずだ」
ミュンヘン安全保障会議のヴォルフガング・イッシンガー議長も警告した。「ドイツ人は他人の話に耳を傾ける方だが、あれこれ指図されれば憤慨するだろう」
2016年の米大統領選でトランプが勝利して以降、アメリカとドイツの関係は悪化の一途をたどっている。トランプはアメリカが長年にわたり巨額の対独赤字を抱えてきたのを根に持っているようで、トランプとメルケルの相性の悪さもあって、関係改善の兆しがほとんどない。
メルケルは4月下旬に訪米した際、アメリカが核合意から離脱すれば戦争になる恐れがあるとトランプに警告していた。さらに新任大使の脅し発言で、両国間の溝は一層広がりそうだ。