最新記事

電子政府

日本人は「マイナンバー活用」で損してる? 北欧の「デジタルトランスフォーメーション」に学べ

北欧諸国やエストニアは、国民IDを基盤とする行政デジタルサービスによってデータ共有の仕組みを改革し、個人や企業の負担を大幅に減らした点で共通している。

デンマークの電子納税システムを例に取ると、国税庁が企業・団体・労働組合から直接データを集めて、あらかじめ確定申告の記入済み画面を作成するので、基本的に個人はそれを承認するだけで手続きを完了できる。

つまり、日本のように報酬を得た企業や団体、寄付先などを個人が逐一記入しなくても済むわけである。フィンランドでも、出生届は親ではなく新生児が生まれた病院が担当するなど、個人の負担は徹底的に軽減されている。

北欧に学び、デジタル社会へ転換を

ひるがえって、日本ではマイナンバーが導入されたにもかかわらず、すでに述べたとおり個人や企業の負担軽減とはほど遠い状況となっている。このような問題を生んだ背景としては、マイナンバー導入の目的と投資効果へのコンセンサスが不明瞭で、そのために組織間でのデータ共有の仕組みを大胆に変革できなかった点を指摘できるだろう。

北欧では官民ともに、効率性を追求する一方で、デザイン思考を取り入れたイノベーションの促進にも力を注いでいる。いわば、両者を車の両輪として、デジタル社会への転換を進めてきた。日本でも、DXを個別企業だけでなく社会の課題と捉える必要があり、効率化とイノベーションの両立を考える必要もある。

「ソサエティ5.0」では、物理空間とサイバー空間の結合が進み、情報革命が農業などの第1次産業も含めて全産業へと波及して、生産・消費、組織、雇用・労働のあり方を根底から変えていくと予想されている。

その過程で、官民の新たなデータの連携・共有に基づき、さまざまなイノベーションが生み出されていくだろう。そして、それが本格化していくのはむしろこれからなのである。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

ニューズウィーク日本版 トランプショック
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月22日号(4月15日発売)は「トランプショック」特集。関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ファンドマネジャー、記録的なペースで米国株売却=B

ワールド

為替は加藤財務相がベッセント財務長官と協議=赤沢再

ワールド

シンガポール議会解散、5月3日に総選挙

ワールド

米副大統領、対英通商合意「可能性十分」 ゼレンスキ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中