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日本人は「マイナンバー活用」で損してる? 北欧の「デジタルトランスフォーメーション」に学べ

2018年5月9日(水)18時55分
砂田 薫(国際大学GLOCOM主幹研究員)※東洋経済オンラインより転載

スウェーデンのエリック・ストルターマン教授は2004年、「デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation:略称DX)」という概念を提唱した。これは、「ITによって人びとの生活をあらゆる面で良い方向へ変化させる」ことを視野に入れている。個別企業のデジタル戦略という意味で、今日の日本企業にとっても重要課題と認識されている。

ワンストップとワンスオンリーで効率化

デジタルトランスフォーメーションを推進しているデンマークの市民ポータル「borger.dk」

スウェーデンを含む北欧諸国は、公的セクターが率先してDXを推進して社会全体の効率性を高め、国の競争力に結び付けた。

たとえばデンマークでは、利便性の高いポータルサイトを通じて、個人と政府、企業と政府のコミュニケーションをデジタルへ全面的に移行した。

2007年に運用が始まった市民ポータルは、ひとつの窓口で手続きが完了できる「ワンストップ」と、一度提出した情報は繰り返し何度も提出を求められない「ワンスオンリー」の原則のもとに構築された。

同サイトは市民にとって便利な行政デジタルサービスのデジタル窓口となり、同様のコンセプトで法人向けポータルサイトも運用されている。

注目すべきは、国民IDや法人IDの活用によって、個人や企業における行政手続きの負担を軽減しただけでなく、行政自らも電子政府のプロジェクトを通じて業務処理コストを削減してきた点にある。

政府はIT投資効果をあらかじめ明確に示したうえでシステム開発プロジェクトに着手し、実際にその成果として間接コスト削減の実績を積み上げてきた。

その結果、今日では教育や医療などの直接サービスに予算を振り向けるために、ITを積極的に活用して効率化を進め、間接コスト削減を図るべきだというのが国民的合意になっている。

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