最新記事

東南アジア

マレーシア総選挙9日投票──マハティール元首相の野党が挑む初の政権交代

2018年5月2日(水)18時41分
大塚智彦(PanAsiaNews)

精力的に選挙活動を続けるマハティール元首相 Lai Seng Sin-REUTERS

<独立以来60年にわたってマレーシアの政権をになってきた統一マレー国民組織に、マハティール率いる野党連合は勝てるのか?>

マレーシア連邦下院の総選挙が5月9日に投開票される。4月28日に告示された同選挙では下院定数222議席を巡ってナジブ首相率いる与党連合(国民戦線・BN)とマハティール元首相を担ぐ野党連合(希望同盟)、野党連合から離脱した全マレーシア・イスラム党(PAS)による激しい選挙戦が続いている。

マレーシアは1957年の独立以来、統一マレー国民組織(UMNO)などの与党連合による政権が続いており、9日の開票結果で野党連合が勝利すれば、初の政権交代が実現することになる。

消費税廃止を訴える野党連合

野党連合の指導者として政権交代に挑むマハティール元首相(92)は、1981年から2003年まで22年間UMNO総裁として首相を務めたが、現ナジブ首相(64)への批判を強め2016年2月にUMNOを離党。その後かつて身内として重用するも同性愛容疑などで政界を追放したアンワル元副首相と歴史的和解を果たした。その後、新政党「マレーシア統一プリブミ党(PPBM)」を設立して「汚職、権力乱用と戦う」ことを宣言、野党連合として「ナジブ政権打倒、政権交代」を目指している。

3月8日に発表された野党連合のマニフェスト(選挙公約)には「2015年導入の消費税を廃止し、新たな付加価値税の導入を検討する」など低中所得者層、都市部若者層へのアピールが盛り込まれた。

野党連合の「希望同盟」にはアンワル氏を指導者とする「人民正義党(PKR)」のほか「民主行動党(DAP)」、「国民信託党(AMANAH)」などが参加しており、野党連合の統一首相候補としてマハティール元首相を指名している。

与党はバラマキや変化球で対抗

これに対し、ナジブ首相の与党連合には「UMNO」「マレーシア華人協会(MCA)」「マレーシアインド人会議(MIC)」「マレーシア人民運動党(グラカン)」などが参加している。

野党に遅れて4月7日に発表された与党のマニフェストは、農村部の低所得者層という支持基盤に向けて「低所得者向け補助金の拡充」を打ち出し、野党などから「選挙向けのバラマキ政策だ」との批判を受けている。

ナジブ首相は「全てのマレーシア人のためのマニフェストであり、誰ひとり置き去りにしない」と野党の批判に反論している。

その一方で、政権側は野党の躍進を恐れるあまりあれこれと変化球を投げつけている。4月7日の下院解散直前には「小選挙区の区割り変更」「フェイク(偽)ニュース対策法」を駆け込み可決させた。選挙区割りは与党候補に有利に変更され、政権批判の報道、情報の取り締まり強化に「偽ニュース対策法」は悪用される可能性があると指摘されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中