武田薬ウェバーCEO「シャイアー買収でR&D選別推進、スピンオフ新会社も」
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5月17日、欧州医薬品大手シャイアーの買収に合意した武田薬品工業のクリストフ・ウェバー最高経営責任者(CEO=写真)はロイターのインタビューに応じ、統合に向けて研究開発分野で大胆な事業選別を進めていく考えを明らかにした。東京で9日撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
欧州医薬品大手シャイアーの買収に合意した武田薬品工業<4502.T>のクリストフ・ウェバー最高経営責任者(CEO)はロイターのインタビューに応じ、統合に向けて研究開発分野で大胆な事業選別を進めていく考えを明らかにした。
また具体的には示さなかったものの、長期的な視点を持つ投資家から今後支援を得られる可能性にも言及した。
ウェバー氏が円滑な統合実現の処方箋として挙げたのは、計画立案能力やスピードのほかに、資金的余裕のない保険会社や政府などが求める医療における高レベルの技術革新をもたらさない治験薬開発を「間引く」ことに力を注ぐ方針だ。
同氏は「それほど革新的ではない資産に無駄な資源を費やさないのが大事だ」と語り、成功しない開発プログラムを取りやめるか、スピンオフ(分離・独立)させていくつかのバイオ医薬品企業を設立し、出資を続ける方針を表明。特にこうしたスピンオフは過去に10回程度実施した戦略だと付け加えた。
ウェバー氏は、2000年にグラクソ・ウエルカムとスミスクライン・ビーチャムが合併して生まれたグラクソ・スミスクラインの出身で、医薬品大手同士の統合の難しさは直接経験済み。「モメンタムを維持し、混乱を引き起こさないことが極めて大切になる。われわれは研究開発に成長を依存している」と強調した。
237年の歴史があり、かつて漢方薬を販売していた武田と、1986年にイングランド南部の商店で生まれたシャイアーには、埋めるべき大きな企業文化の差がある。
ただウェバー氏は、シャイアーが基礎研究よりも完成に近い医薬品の開発を重視し、閉鎖が必要な大規模研究施設を保有していない点は重大なメリットだと指摘。「一般的な合併・買収(M&A)よりもずっと混乱が小さくなると思う」と主張した。
武田は統合完了後の3年で少なくとも14億ドルの経費節減効果を生み出すと見込んでおり、削減対象には6億ドルの研究開発費用も含まれる。開発プログラムの重複をなくしたり、合理化することで達成するという。
ウェバー氏は、武田のいくつかの既成薬に対する研究開発投資が終わりつつある点が経費節減効果につながると説明する。それでも現在の両社合計の研究開発費44億ドルから見て、6億ドルを削る影響は大きい。